現代環境法の諸相( 09)第5回「環境法政策~政府の役割(3)」

現代環境法の諸相 (放送大学教材)

現代環境法の諸相 (放送大学教材)

・環境法の実施について、政府や市民団体の役割を考える。また環境法がどのような仕組みになっているのか考える。

・環境法の目的を実現するためには、強制的アプローチ、誘導的アプローチ、手続的アプローチ、計画的アプローチ、規制的アプローチ、合意的アプローチがある。

・強制的アプローチは違反行為に対する罰則が代表的であり、誘導的アプローチは補助金が代表的であり、手続き的アプローチでは環境アセスメントが代表的な手法である。

・環境法に規定がなくても法に反しない限り条例は制定できる。つまり地方自治体では地域の実情に応じた環境対策を行うことができる。

・環境法の下で行政は業者を監視する立場となるが、行政と業者が癒着することはありうる。このため、住民による監視の手続きも必要である。

・計画的アプローチは、環境基本法第17条による公害防止計画などがその代表的なものである。

・規制的アプローチでは行政と事業者は垂直関係になる。一方、合意的アプローチとしての協定関係は行政と事業者は水平関係にある。交渉によって守るべきことが決定される。

・いわゆる迷惑施設の設置については住民参画がある。産業廃棄物処理施設は、知事の許可により初めて設置が可能となる。この規定は簡単なものである。憲法第22条第1項では営業の自由、そして29条では財産権が規定されており、法では規制を強く行うことができなかったものと考えられる。

・北海道では産廃処分場施設の設置に関して、高校が近くにあるなど住民の状況を勘案して不許可としたが、札幌地裁は、知事の権限を逸脱するものとして不許可処分を違法であるとした。

・最後にこれまで三回の総括であるが、環境法政策には基本となる考え方、いわば「持続可能な発展」ということがある。これを実現するのが環境法である。

・環境法の考え方には、因果関係に基づく未然防止的アプローチと予防的アプローチがある。環境に関連する関係者の意思決定を環境配慮に向かわせることがもっとも重要なことである。