カンブリア宮殿 電子書籍元年×村上龍~変化に怯えるか?ワクワクするか?

グーテンベルク活版印刷(『グーテンベルク聖書』1455年)から500年がたち電子書籍が生まれた。各社から端末が続々登場し始め、2010年は電子書籍元年といわれている。電子書籍を端末で読むことができるばかりでなく、自費出版電子書籍で行う人も増えてきた。

本を自分で電子化する「自炊」も行われている。自炊を手がけるベンチャー企業「ブックスキャン」という会社がある。この会社では、全国から送られてきた書籍を電子化している。注文が多く、来年の2月まで予約でいっぱいである。

この10年で電子書籍元年といわれたことが三回ある。まず6年前、SONYが端末「リブリエ」を出したが失敗した。本が数万点しかなかった。

その後、AMAZONKINDLEという端末を出した。これは70万点の書籍が購入可能ですばやく広まった。これは、日本では書籍に関して紙出版と電子出版で再度契約を必要とする構造があり電子化しづらいのに対し、アメリカでは商慣習が異なり、すばやく出版物を電子化できるという利点を持っている。

しかし、こうした流れに対して批判的に見る立場もある。音楽家の坂本龍一は、10年前の音楽の電子配信化によりCDの売り上げが半減し、ニューヨークでもほとんどCD店が無くなってしまったことをみて、大量販売する設備を必要としなくなったことからさまざまな既得権利も失われたと見ている。

書籍の電子化は、このCDの販売店の衰退と同様に、大手出版社の衰退を招くのだろうか。

著作権が「ビジネス」につながるようになったのは20世紀になってからであり、典型的だったのはディズニーの成功である。しかし、このモデルは今後存続できないだろうと考えられている。

村上龍は、電子書籍の会社を設立することを決めた。G2010という会社である。村上龍の全著作の電子書籍化・販売を行い、他の作家の作品も扱う。出版社は通さない。会見で、出版社は紙の本を作るノウハウはあるが電子書籍を作るノウハウが非常に少ないという。

(村上)出版社が作家を育てる、というが、育ててもらったという感覚はない。印税は紙の場合は10%である。電子書籍では40%となる。作家と読者が電子書籍だとダイレクトにつながる。

出版社は電子書籍のプレーヤーになれるのか。

(野間講談社副社長)紙の積み上げで書籍を電子化しても面白みがない。電子ならでは利点をふまえ一から作るのでないといけない。

(村上)電子書籍は広大なフロンティアが広がっている。自分で踏み出し、確かめていきたい。