ハートをつなごう「シリーズ 薬物依存~アメリカ・ドラッグコート~」
アメリカには「ドラッグコート」という薬物専門裁判所がある。ここは、刑罰を科すというのではなく治療に注力するための場となっている。
(体験者)ドラッグコートで回復プログラムを選んでも、薬物を使う友人がいてなかなかやめられない。恋人の支援でなんとか友人と会わないようにし、薬物依存から脱することができるようプログラムによる取り組みを続けている。
回復プログラム実施中は、尿検査で薬物を使っていないかどうか確認を受けたうえで、グループミーティングに参加する。これはすべて有料である。欠席が続くと実刑が課せられることもある。
ドラッグコートは刑務所に閉じ込めるのでなく、社会生活を送りながら回復を図るというやり方だが、1980年代は厳しく取り締まり、100万人の薬物中毒者が収監されることとなった。しかし「薬物中毒者は収監する」というやり方では政府も財政的に対応できず、ドラッグコートをマイアミで初めて設立し、現在の体制に移行していった。
ドラッグコートでは、依存症からの回復だけでなく、就労支援なども行ったり、資金援助などさまざまな支援をNPOとも協力して行っている。また、回復プログラム実施中の者について、薬物の再使用が認められても、より厳しいプログラムへ移行して対応することとし、刑務所へは収監しないようにしている。
プログラムを無事終了した者について一ヶ月に一度卒業式を行っている。一人ひとりに修了証が配られる。
(NPOアパリ事務局長 尾田真言)刑務所に収監された者の再犯率は60%であるが、ドラッグコートの場合は25%である。家族と一緒に過ごすことでこれまでの生活を続けながら回復を期することができる。
ドラッグコートでは、医療・福祉関係機関のみならず食料支給団体やホームレス支援団体、職業能力訓練学校なども支援の輪に加わっている。
(ダルク代表 上岡陽江)「人が再生する」ということをこうした修了式を行って認めてくれるということがうれしい。
ドラッグコートはすべて有料である。このため財政への影響は少ない。
(精神科医 松本俊彦)再犯を防ぐという視点からしても、日本におけるドラッグコートの整備は急務ではないか。ただし、現在まだ薬物中毒者を支援をする団体が少なすぎる。
(石田衣良)アメリカは「自己責任の国」といわれるが、こうした仕組みはきちんと作っている、ここに学ぶべきでは。