労働経済( 08)第14回「コーポレートガバナンスと労働組合」◇大阪大学大学院教授・松繁 寿和

労働経済 (放送大学教材)

労働経済 (放送大学教材)

・ 日本では、企業は従業員のものであると言う考え方が強かったが、最近では株主のものであると言う考え方も強くなってきている。

1. ステークホルダー(会社の利害関係者)

2. 労働組合の役割

3. 労働組合の歴史

4. コーポレートガバナンス

・ 日本でも敵対的な労使関係はあったが、だんだん協調的なものが中心になってきた。終身雇用、年功序列、企業内労働組合などがその背景としてある。

バブル崩壊後、企業は雇用調整を余儀なくされている。また資金を外資に頼り、海外の企業統治の考え方=企業は株主のものであると言う考え方が広まってきた。

CSR(企業の社会的責任)に注目が集まるようになってきている。

・ 企業のステークホルダーとしては、株主、従業員(組合員)、消費者、周辺住民、取引企業などがある。

・ さまざまなステークホルダーのうち組合だけは組織化され、企業と定期的な交渉を行うことができ、給与水準の決定などに関与できる。

労働組合組織率は1950年の60%以降、とりわけ1970年代から下がり続け現在は20%程度である。比較的組織率の高かった大企業においても50%を切る水準である。

・ 組織率低下の原因として産業構造の変化がある。建設、製造業の組織率は高いが卸売り、飲食、サービス業などは低い。産業が第三次産業化するにつれて日本全体の組合組織率は低くなってきている。また雇用構造が変化し、非正規化が進むにつれて、これらの者は正規社員と利害が異なり、非正規を厚遇すると正規が冷遇されるなどのことがあるため、組織化されにくくなってきている。

コーポレートガバナンスステークホルダーのあり方が組合に影響を与えている。株主(外資の導入による株主利益の尊重)、周辺住民、取引企業(ストライキをするとJustInTimeが実現できない)、消費者(商品が供給されないと労働組合の活動が支持されない)、環境や社会全体に及ぼす影響などが組合の交渉力を弱め、賃金水準は低くなる。