落語『立川談春独演会』有楽町朝日ホール

年の瀬も近い金曜日の夜だったが、714席のこのホールがやはり満席の状態だった。

最初の噺は『黄金(きん)の大黒』、大家の息子が長屋の子どもと遊んでいて黄金の大黒を掘り当て、そのお祝いで大家は長屋連中を招待して宴席を開こうとする。長屋連中は、じつはまったく家賃を払っておらず、呼び出されるのは追い出されるためではないかと戦々恐々としている。

そんななか、一応お祝いの席なので羽織を着ていかなければ、と知恵を出すが、みな貧乏で誰も羽織を持っていない。それどころか羽織自体を知らない者もいる。

そのうち宴席が始まり、料理で出てきた鯛のセリを始めるなど大変な騒ぎとなる。

f:id:alpha_c:20121114113122j:image:left幕が入り、続いて年の瀬らしく『富久』、長屋に住む芸人(たいこもち)の久蔵、なけなしの一分で富くじを買う。

久蔵は芸こそ一流だが酒癖が悪く、だれにも呼んでもらえない状態だったのだ。

さて、そんなとき、知り合いの旦那の近所で火事騒ぎがあり、久蔵はなんとか仕事にありつきたい一心で旦那のもとに駆け付ける。

旦那の家はなんとか延焼はまぬかれたものの、今度は浅草三軒町のわが長屋が火事で全焼してしまう。

そこに置いてあったはずの富くじ「松の一一一一番」がなんと千両の当たりくじであったことが分かる。久蔵は天を仰ぐのだが・・・。

富久は、ともかくお金にまつわる人間の心理があからさまで、そんなところが面白さであるとともに、思わずわが身を振り返ってしまう。

談春さんは今回が二回目となるが、明るさと少し斜に構えたところが特徴だろうか。

年末恒例のギャンブルの話などは、体験者ならではといったところだった。