映画『最強のふたり』監督・脚本:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ、2011年

フィリップ(フランソワ・クリュゼ)は裕福で調度の整った邸宅に住んでいるが、若い時分のパラグライダーの事故で首から下が不随の状態にある。フィリップは常時ヘルパーによる介護を必要とし、数多くの介護志望者と面接するが、彼の目に留まったのは専門的な介護知識もなく、申し込んだ理由が「不採用通知を得ることで失業給付を受けるため」という黒人青年のドリス(オマール・シー)だった。

ドリスは、複雑な家庭環境に育ち、家から追い出されて路上をさまよっていた状態だった。そんな境遇ながら、ノリのいい音楽とスポーツカーと女が好きで、歯に衣着せぬ強気な物言いをする。教養があり芸術に造詣の深いフィリップから見ると対照的な存在だったが、言葉を交わすうちにフィリップはドリスに興味を持ち、本人の意思とは裏腹に、また周囲の反対も押しきって採用してしまう。

f:id:alpha_c:20120917114637j:image:left採用されたドリスは、フィリップの介護を見よう見まねで始めるが、実際の介護は大変だ。ドリスは排せつの世話などやりたくない介護は平気で人に押し付けてしまう。こうしたドリスのあけっぴろげな態度や物言いに周囲もフィリップも手を焼く。

しかし、これまでともすれば腫れ物に触るように扱われてきたフィリップはドリスの率直さに好感を持ち、二人はいつも行動をともにするようになる。二人はかつてフィリップの障害の原因となったパラグライダーを楽しんだり、上流階層の集うオペラ劇場で大笑いして周囲の失笑を買ってみたりといつしか離れがたい存在となっていった。そして頑なだったフィリップ自身も率直に語り、前向きに人生を楽しめるようになる。

ところがあるとき、ドリスの弟が悪い仲間から暴行を受けて荒んだ状態となり、フィリップは自分の介護ではなく弟の近くにいて見守ってやってほしいとドリスを諭し、二人は別れのときを迎える。

f:id:alpha_c:20120917114636j:image:left対照的な境遇のふたりがさまざまなエピソードを経て絆を深める映画はこれまでも多くあったと思う。分かりやすい図式ながら、ああフランス映画らしいなあ、心理描写が巧みで町の風景も魅力的に切り取っているなあ、という印象だった。