映画『グスコーブドリの伝記』監督・脚本:杉井ギサブロー、2012年

f:id:alpha_c:20120711214702j:image:leftグスコー・ブドリは森で生まれ、木こりの父と優しい母、そして妹ネリの四人で平和に暮らしていた。しかしあるとき彼の地は長く厳しい冷害に襲われ、一家は離散してしまう。残されたブドリは家を出て、同じ山中の農家で働くようになる。

稲の病気などがあったものの、順調に収穫をあげることができるようになり、ブドリは一生懸命働きながら安定した日々を過ごす。ところが、数年後一帯はまた厳しい冷害に襲われ、働くこともできないようになる。ブドリは、農家を出て列車に乗りイーハトーブの町へ出る。町の大学で、以前から本を読んで尊敬していたクーボ博士の教えを受け、また推薦されて一帯の火山の管理を行っている火山局で働くようになる。

そして、冷害は再度この地域を襲おうとしていた。ブドリは、何とかして不幸な人々が増えないようにしたいと思い、思いきった策をクーボ博士に打ち明ける。

この作品はアニメで、かつて『銀河鉄道の夜』で登場した猫を模したキャラクターを主人公のブドリとして採用している。話のとりとめなさは原作にもよるところだが、「本格的な作品」というより、少し「子ども向け」を意識して幻想的な部分を前面に出しているように見えた。

原作を読んで思うのは、作者である宮沢賢治の頭のなかでは、この物語を借りて、科学の知識を活用してどのように人が幸せに暮らせるか、を語りたかったのではないか。映画の最終章では自分を犠牲にしてみんなを救うクライマックスが原作とは違うストーリーで急ぎ足で描かれているが、その分、科学知識をどうわれわれの生活に役立てられるかという主題が少し薄くなってしまっているように感じられた。