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サントリーホール フェスティバル ファイナルコンサート《譚盾/マーシャルアーツ三部作~映像付き演奏会》サントリーホール

f:id:alpha_c:20111123201806j:image:w240:leftこのコンサートは、ヴァイオリンの五嶋龍、中国箏のジャオ・シャオシア(真っ赤なチャイナ・ドレス)、チェロのアメデオ・チッケーゼ、ピアノのユンディ・リを迎え、作曲家としてさまざまな映画音楽を手掛ける譚盾(タン・ドゥン)を指揮者に、マーシャルアーツ(中国の漢字表記では「武侠」)の映画作品三部作の音楽(協奏曲)を演奏する催しである。

美しいコンサート会場に簡易型のスクリーンが中央と両翼に配置され、映画の名シーンを映し出す。その映像を見ながら、舞台上では、ソリストとオーケストラ(東フィル)が演奏し、そして最後の作品では合唱団(サントリーホールフェスティバル合唱団)も加わるという一風変わった趣向だった。

グリーン・デスティニー》はじめ三部作は、中国王朝の覇権争いをテーマとしたもので、映像としては王宮や街中、戦場などを舞台として繰り広げられる卓越した武芸者による戦いのシーンが印象的だった。とりわけ、黄葉が吹きすさぶなかでの女戦士の戦いは色彩のコントラストが見事に美しく、敵兵に囲まれて宮城を後にする王の姿は哀しみに満ちたものだった。

ソリストたちは、中国ならではの旋律に満ちた映画音楽をそれぞれヴァイオリン、チェロそしてピアノという西洋楽器で美しくも力強く表現していたが、今日の音楽は、情景音楽的な色彩が強く、メロディーラインが明確だったピアノ協奏曲の最終章などを除いては、楽器の持ち味が十分に活かされていないようにも思われた。また「合唱とピアノ」という組み合わせも相乗効果を生む組み合わせにはならなかったようだ。もともとこのピアノ協奏曲は熱情的な演奏をするラン・ランに向けて書かれた曲だったようで、叙情的なユンディ・リには向いていなかったのかもしれない。

記憶を辿ると、数年前、台湾に向かうエバー航空の機中でやはり中国のオーケストラによる中国伝統のメロディーラインを持った楽曲を聴いたことがあり、このときは大河のようにゆったりとした雄大な曲調を西洋楽器が優れて美しく奏でていたことが思い出される。このことを考えると、必ずしも西洋楽器が中国の音楽に適合していないとは言い切れないと思う。

今回の催しは、企画としては「映画を回想しつつ音楽を愉しむ」ということで、演奏が主、映像は飽くまでも従の位置づけだったはずだが、どちらかというと演奏が従となってしまった感があった。けれど、全体としてみると強く印象に残る面白い趣向だったのと、なんといっても間近に若いスター達の息遣いやオーラを感じることができ、貴重な体験となった。

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