クローズアップ現代「シリーズ変わる農業 コメ輸出 農業は再生するか」

日本の米を中国の富裕層が購入するようになってきている。農林水産省は中国に向けて日本の米を積極的に売り込もうとしている。コメ輸出で日本の農業は再生するのか。

日本におけるコメ消費量は823万トンであるのにたいし、中国では1億3,000万トンである。日本では、将来中国に向けて20万トンを輸出できるようにしたいと考えている。

農林水産省がコメの輸出先として選んだ中国農業発展集団の会長が日本を訪れ、日本からの輸入を実現したいと表明した。例えばコシヒカリは二キロで2,500円と中国のコメの四倍近い値段であるが売れ行きは好調である。北京では富裕層が10万世帯もある。

輸出を拡大するには、中国側の条件を緩和することが必要である。例えば燻じょうを大きな倉庫の中ではなくより小さな施設で行う、また燻じょう倉庫を増設するなどである。

全農でもこれまでの贈答用中心から業務用、家庭用のコメの輸出を実現したいとしている。

政府としてはこれを突破口にして農業の活性化、農家の収入の拡大を目論んでいる。

宮城大学副学長 大泉一貫)これまでは日本の米作は悪循環だった。今後は輸出を拡大することで農家の位置づけが180度変わることが期待されている。価格ではなく品質で売り込みたいとしている。こうした取り組みは多くの農家にとってのインセンティブになるのではないか。

新潟県農業法人では、さまざまな分析器具を利用して品質の高いコメを生産しようとしている。データの開示により安全、安心につながるのではないかと考えている。

大手商社では、農村部の人件費の上昇などにより日中のコメの価格差は将来解消し、日本のコメの力が高まっていくのではないかと考えている。

岡山では、地主から土地を買い上げて耕地の規模拡大を行い、コスト削減しようとする取り組みもある。苗を作らず、乾田直播を行っている。畦をなくして、農機具を効率的に使用できるようにしている。

(大泉)中山間地の農業と大規模化などにより効率化できる農業は異なる。前者を保護しつつ、後者を伸ばしていくことが大切である。世界の市場は長粒種が主であるため、どうやって食べるのかという食生活を含めコメを売り込んでいくべきだろう。おいしさ、健康などを売りにしていきたい。

■コメント

果物などとは違い、コメは主食であるから、それが単体で受け入れられるとは思いがたい。しかし、中国は種類こそ違え主食をコメとしているのだから、受け入れの素地はあるだろう。

高級なコメ以外の安いコメの可能性については、カリフォルニアやタイのコメに比べ日本のコメがどのような比較優位があるのかという問題がある。

一方で、日本のコメを中国の農家が作ることも考えられる。技術・資本集約により行うことのできる農業は、ある意味では真似のできる農業であるともいえるのでは。

20万トンという数字、野心的と言われているが、それほど大きな数字とは思われなかった。(中国消費量の0.15%程度)