サイエンスZERO「ウイルスでがん消滅!がん治療最前線」

がん治療は、外科療法、化学療法、放射線療法が代表的である。近年、これに加えウィルス療法が研究されている。がん細胞をウィルスで殺すものである。

ヘルペスウィルスはありふれた身近なウィルスであり、口唇ヘルペスなどがある。日本の大人はほとんどなんらかのヘルペスウィルスに感染している。

通常ウィルスは一度感染すると免疫ができてしまう。しかしヘルペスウィルスは免疫を逃れて増殖することができる。病原性をコントロールしたウィルスでがん治療を行おうとしているのである。

脳腫瘍の中には放射線療法や化学療法では治療できないものがある。新しい治療のアプローチが必要として研究されてきた。もともと、ウィルスを利用した臨床試験は100年前から行われてきた。しかし、がんが治るほどウィルスを使うとそのウィルスによる病気にかかってしまうということになってしまう。ウィルスの病原性をコントロールできるかどうかが鍵であった。

多くのウィルスは細胞を殺すことができる。ウィルスを感染させると核の中でウィルスは増殖する。そして細胞を殺して出て行く。しかし、遺伝子を改変したウィルスは正常細胞の中では増殖できず、がん細胞の中だけで増殖する。

ヘルペスウィルスは古くから研究されその遺伝子が分かっている。ガンマ34.5など三つの遺伝子の働きを止めるとがん細胞にのみ有効となる。ガンマ34.5を停止したヘルペスウィルスはがん細胞を自滅させず、増殖して上でがん細胞を壊し、そして他のがん細胞に感染していく。ICP6という遺伝子を止めると正常細胞内では増殖できなくなる。

これを利用したマウスの実験では、二つの遺伝子を改変したウィルスを注射すると4分の1に増え方が減っていた。これにアルファ47という遺伝子の働きを止めるとがん細胞の表面に特有のたんぱく質が生成され、免疫細胞が攻撃しやすくなる。

実験したところ、およそ二日でがん細胞を全滅させることができた。これをG47デルタというが、これによりがん細胞を縮小させることができる。

実用化に向けては、現在第一相の臨床試験を行っている。脳腫瘍について適用を試みている。白血病には効果がないが、乳がんなどには効果がある。世界では、日本がG47デルタ、イギリスが1716(第三相)、アメリカ・ヨーロッパがOncoVEX(第三相)、中国がH101(製品化)というところまで来ている。

ウィルスはがん診断にも使うことができる。

がんは多様性があり治りにくい。しかしウィルス治療はさまざまな性質のものを投入することにより対応できる。

遺伝子組み換えを行っているが、自然界では遺伝子組み換えはしょっちゅう起きている。変異することでウィルスが強くなることはない。