サイエンスZERO「金星探査機“あかつき” 失敗を乗り越えられるのか」

金星探査機「あかつき」は、2010年12月7日に金星の周回コースに入ろうとする逆噴射で失敗した。6年後に再チャレンジすることが検討されている。

あかつきは2010年5月21日にH-2Aロケットで打ち上げられ金星に近づいたが、この結果となった。

宇宙航空研究開発機構准教授 今村剛)プロジェクトは今回の件で大変衝撃を受けている。再チャレンジという目標を立て全員結束して対応している。

スラスタエンジンの逆噴射はワンチャンス、720秒を予定していた。グラフで見る限り、あかつきのスピードは順調に落ちていき、この時点では大丈夫だと考えられていた。

ところが通信回復の時間を過ぎてもあかつきからは電波が届かない。最初は大丈夫だろうと思ったが、時間が過ぎるにつれ重大なことが起きているのではないかという疑いが大きくなった。

あかつきは、予定の場所から大きく離れた場所にいることが分かった。回転しながら救援を待つ「セーフホールドモード」に入ってしまっていることが分かった。

深夜3時過ぎ、メンバー全員に軌道投入失敗が告げられた。

スラスタエンジンの逆噴射は158秒しか行われなかった。逆噴射は8時49分に開始された。しかし、機体が揺れ、補助の姿勢制御エンジンが作動し、危険を感じたメインのエンジンがストップしてしまった。あかつきは指令による航行から自律航行に変わり、375秒後、回転しながら太陽電池を作動させるセーフホールドモードへ移行し、SOSを伝える微弱な電波を出すようになった。

現在あかつきは金星から300万キロ離れた地点を航行している。

(今村)金星の特徴としては、地球の双子のような惑星であるということがある。46億年前はほぼ両星ともに同じような状態であったと考えられる。しかし、金星は現在灼熱の惑星である。太陽に近いというから熱いというわけではなく、二酸化炭素による温室効果が大きな原因であると考えられている。金星の中ではスーパーローテーションという強風が吹いている。秒速100m、自転の速さの60倍の速さの風である。地球でも偏西風が秒速30mで吹いているが、金星の自転周期は243日であり、自転が遅いにもかかわらずこうした高速の風が吹くことは地球の常識では考えがたい。

軌道投入から6日後、関係者を集めてもう一度あかつきを金星に送り込むための会議が開かれた。金星が太陽を10周、あかつきが11周した6年後に両者は出会うことになる。しかし搭載のリチウムイオンバッテリーは4年半しかもたない。担当者はこれを低い温度で保つことでなんとか持たせたいとしている。また逆噴射をもう一度行わなければならない。これがきちんとできるかどうか。

(今村)6年後の可能性については今言うことはできない。しかし総力を挙げて検討している。

10年間、250億円をかけたプロジェクトである、この失敗の検証はきちんと行う必要がある。