クローズアップ現代「介護保険“置き去り”3万8000人」

・ 介護が必要であるにもかかわらず介護保険のサービスを受けることができない人が全国で38,000人いる。

介護保険は40歳以上の者が加入し、利用料の1割を払うことでサービスを利用できる。介護保険サービスの利用者は407万人いる。

介護保険を使わない理由として、他人に迷惑をかけたくない(これが最も多い)、また認知症で本人の意思を確認できない、また利用料の1割を払えない、などの者がいる。

富士見市では17,000人の高齢者へのサービスを10人の職員で対応している。担当者は介護サービスを受けていない高齢者の住宅を回っている。高血圧の高齢者を訪問したが、亡くなっており、しかも3週間も経っていたということがあった。人の助けを借りたくないという考え方の人だった。

・ また、お金の管理もできなくなっている認知症の者にヘルパーやデイサービスの利用を薦めているが、本人は自分自身が介護が必要な状況であることが分からない。家族に連絡をとっても家族は積極的に行動しない。

・ 夫が認知症になり、自分が家計を支えるために働きに出たいと考えている妻、しかし介護保険を滞納していたため利用料の3割を払わないと利用できない状態になってしまっており、また延滞していた分も納入を受け付けてもらえないという状態であった。

厚生労働省は、介護保険が保険サービスである以上、保険料の滞納者に対してサービスを行うことは公平性を欠くと考えている。生活保護成年後見制度もあるわけだが、家族や身寄りがなく後見人がない人も多い。

・ (宮島厚生労働省老健局長)夫婦二人の世帯で一方が認知症になる、というところまでは制度設計時に想定できなかった。「介護」という観点ではまず家族によるサポートが中心になければならない、と考えていたわけだが、今後は夫婦二人という世帯を想定して制度を再検討する必要がある。

・ 国は、現在のところ既存の介護保険サービスを充実させる方向でしか考えておらず、制度から抜け落ちた人に対する対策を考えていない。

・ (結城康博 淑徳大学准教授)こうした制度の利用に結びつかないケースは多くあるだろう。国とサービス受給者は対等でなければならないが、認知症者などは対等とはなりえない。そうしたギャップを埋めるためには、保険というより福祉の機能が必要となる。老人福祉の機能強化を考えるべきだ。