オペラ『椿姫』新国立劇場

「高校生のためのオペラ鑑賞教室」として開催された本公演に参加した。

前回のバレエでも学生団体が入っていたが、今回はそれ以上に会場がざわついており序曲が始まっても静まらない。もともと「高校生のため」を目的とした公演であり、当日券を手に入れた一般客(50席)以外はすべて高校生だった。

これは事前に予想できたことでもあり、できるだけ舞台に集中するように心がけた。自分の席はオーケストラピットの直上であり、舞台が見やすい席とは言いがたかったが、高校生たちとは少し離して設定しているようであり、これは集中するにはありがたい配慮だった。

キャストはすべて日本人だった。公演については、観客席と同じように前半は大丈夫かなと心配させるような状態だった。アルフレードテノール)のイタリア語の発声にやや難がある、より具体的には日本語のような発声に聞き取れるところがあった。またヴィオレッタ(ソプラノ)には、高音域の発声がややヒステリック気味でドラマティック・ソプラノとは言いがたかったのではないかという印象だった。

いっぽうでジェルモン(バリトン)は主役の中では一番安定しており、安心して聴くことができた。

ただ、終わりに近づくにつれソプラノの調子もずいぶんよくなってきたようだ。美しいレッジェーロの声で見事に歌いあげていた。それはこの演目の構成として、いわば生の絶頂のような、夜を徹しての宴から穏やかな生活、そして死へ向かうという、情景自体の変化によるところもあろうかと思う。とくに3幕のヴィオレッタのアリア「過ぎ去りし、夢の日々よさらば」は一番歌い手の良さが出ていた。

合唱はオペラ劇場の実力を示すものであり、初めて聴く自分としてはここを一番期待していたとも言えるが、これはと積極的に推せるような印象は残らなかった。

最後に東京フィルの演奏だが、とくに難はなかったと思う。いわれるほど「速すぎる」ということはなかった。

<追記>

この後、5階の情報センターで、川村真樹の『眠れる森の美女』、ザハロワ・マトヴィエンコの『白鳥の湖』を視聴した。川村真樹については初演ながら自らのテクニックを忠実に役柄に再現させていたという印象であった。ザハロワは明らかにテクニック・表現力ともにすばらしいが、それと同等に、日本人とはひときわ異なる肢体の美しさということも印象に残った。

いずれにせよ、新国立劇場のバレエの完成度は非常に高い。今のところ「新国立はオペラよりバレエ」なのかも知れない。

(以上、新国立劇場ドトールコーヒーにて記す。)

f:id:ymsk2002:20080717213932j:imagef:id:ymsk2002:20080717214200j:image