映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、2014年

かつて『バードマン』という映画に主役で出演し、大きな興行成績を上げた俳優リーガン・トムソン(マイケル・キートン)だが、最近はヒット作もなく、ニューヨークで薬物依存症の娘サム(エマ・ストーン)と細々と暮らしている。 彼は、かつての栄光を取り戻…

オペラ『マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ』

この作品は、マリア・カラスについて唯一に近い形で残っているオペラの歌唱シーンをリマスターしたフィルムで上映するものです。 時は1958年、パリ・オペラ座にマリア・カラスが34歳でデビューした公演(大夜会)を収めたフィルムです。 フランス大統領のル…

「比較史のなかの日本・アジア」(UTokyo OpenCourseWare 学術俯瞰講義)【「世界史」の世界史 第4回】東京大学文学部東洋史学研究室 島田 竜登

■内容 1.比較史とは何か 「比較」と「連関」は、グローバルに物を考えようとするときの代表的な手法である。今回の講義では「比較」を中心に考える。 比較はポイントを定めて検討を行う。比較は、単純に比較する手法、ある地域をモデルとした実用的な比較…

「実証すること、法則を見出すこと」(UTokyo OpenCourseWare 学術俯瞰講義)【「世界史」の世界史 第3回】東京大学文学部東洋史学研究室 島田 竜登

■内容 1.「近代歴史学」と実証主義 近代歴史学は実証主義に基づいて構築されている。実証とは、「ある対象の過去の姿を、時間軸に沿って実証的に整理・確定して示す」であり、「厳密な史料(文献・文字・記録・画像など)批判・解釈によって過去をあるがま…

「近代歴史学と世界史」(UTokyo OpenCourseWare 学術俯瞰講義)【「世界史」の世界史 第2回】東京大学東洋文化研究所 羽田 正

■内容 1.過去と現代における過去の見方 聖書:これは、当時の人々の歴史観を表している。世界は神が作ったものであり、そしてその意思に基づいて破滅を迎える。300年前はそう考えられていた。コーランもまったく同じ認識に基づいており、当時の人々の考…

「世界の世界史」(UTokyo OpenCourseWare 学術俯瞰講義)【「世界史」の世界史 第1回】東京大学東洋文化研究所 羽田 正

■内容 1.歴史の種類 存在としての歴史:実態としての歴史。歴史そのもの。 記録・叙述としての歴史:文字で残された歴史。叙述:過去をよみがえらせる。一方で書かれなかったものもある。歴史家の叙述と小説・ドラマはどう違うのか。小説・ドラマは何を作…

バレエ『ロミオとジュリエット』ボリショイバレエ団

全体を見ての個人的印象です。 これまで見た『ロミオとジュリエット』のなかでは一番だったのではないかと思います。 演劇的なバレエで、その演劇性をうまく各ダンサーが表現していました。 ティボルト役のミハイル・ロブーヒンはその点非常に効果的に演じて…

『吉本新喜劇』なんばグランド花月

なんばグランド花月、初めて行きました。 南海の難波駅から近いんですね、細い商店街を通るとすぐに到着しました。 前半は、漫才や落語、後半は吉本新喜劇となります。 落語は、桂小枝さんも月亭八方さんも枕だけで笑わせていました。 漫才はさすがに大阪で…

『「幻想絶佳:アール・デコと古典主義」展』東京都庭園美術館

現在東京都庭園美術館で行われているこの美術展に行ってきました。 アール・デコの様式で建築された朝香宮邸がこの美術館になっています。 美術展もさることながら、このお屋敷自体が重厚なもので、この各部屋を巡ることで当時の生活を想像することができま…

バレエ『くるみ割り人形』ボリショイバレエ団

これまでは『くるみ割り人形』といえば、ロイヤルのピーター・ライト版でしたが、ワイノーネン版を下敷きとしたグリゴローヴィチ版を見るのは初めてと思います。 マーシャが、最初から最後まで踊り、子どものクララと金平糖の精に分けて演じるグリゴローヴィ…

歌舞伎『壽初春大歌舞伎』歌舞伎座

昼の部で金閣寺、蜘蛛の拍子舞、一本刀土俵入の三本立てでした。 金閣寺は初めて観ましたが、後日新聞でも報道されていましたが、セットに非常に力を入れているということが分かりました。たんなる金箔ではないんですね。 蜘蛛の拍子舞は源頼光ものです。蜘…

今年の観劇三本(前年以前の公開作品や映画・DVDにより視聴したものを含む)

今年の印象に残った舞台は以下のとおりでした。 3位 バレエ『ラ・バヤデール』ボリショイバレエ団(2014年11月鑑賞) ニキヤを演じたザハーロワについては見事というよりほかありません。特に婚礼の場での踊りについては、悲しみを踊りとして見事に表現して…

今年の映画三本(前年以前の公開作品やDVDにより視聴したものを含む)

今年見た映画の中で秀作(前年以前の公開作品やDVDにより視聴したものを含む)を選んでみました。 今年は、ストリーミングサービスも活用しながら81本の映画を観賞しました。 3位 小津安二郎『東京物語』1953年(2014年5月観賞) 復興が進む1953年の日本の…

今年(2014(平成26)年)のレストラン五軒

ずいぶん過ぎてしまいましたが、平成26年に伺ったレストランを記しておきたいと思います。 番外編 レストランフウ(2014年2月訪問) 乃木坂にあるフレンチレストランです。 ジビエ料理はすばらしいものでした。 食器類も洒落ていました。 5 赤垣屋(2014年8…

映画『きっと ここが帰る場所』監督:パオロ・ソレンティーノ、2011年

ダブリンの豪邸で暮らす、かつてのロックスター、シャイアン(ショーン・ペン)だが、知り合いはごく少数で毎日を坦々と送っている。 そんな彼に、ニューヨークで暮らす父の危篤の知らせが入り、駆け付けたもののすでに父は亡くなっていた。彼は30年もの間父…

歌舞伎『十二月大歌舞伎(夜の部)』歌舞伎座

今月の夜の部は、通し狂言『雷神不動北山櫻』(なるかみふどうきたやまざくら)でした。 通し狂言を構成する『毛抜』『鳴神』『不動』は、個別の演目としては上演されてきましたが、チラシを見ると歌舞伎座において「通し」で上演されるのは初めてなのだそう…

映画『瞳の奥の秘密』監督:フアン・ホセ・カンパネラ、2009年

ブエノスアイレスの裁判所を定年退職したベンハミン・エスポシト(リカルド・ダリン)は、自らが手がけた25年前の猟奇的な殺人事件を題材に小説を書こうとしている。上司であった検事のイレーネ(ソレダ・ビジャミル)をはじめ当時の関係者に出会うなかで、…

映画『バーティカル・リミット』監督:マーティン・キャンベル、2000年

一級のクライマーの父に育てられた兄妹、彼らは登攀中の岩壁で事故に遭遇し、指示のもとザイルを切って父を亡くすという悲劇的体験をトラウマとして持っていた。兄のピーター・ギャレット(クリス・オドネル)は写真家となり、一方妹のアニー・ギャレット(…

バレエ『ドン・キホーテ』ボリショイバレエ団、東京文化会館

今年来日したボリショイバレエ団は、東京では『白鳥の湖』、『ラ・バヤデール』、『ドン・キホーテ』を上演します。 特に、ザハーロワの出演する公演は人気が高く、売り切れだったようです。先週ライブビューイングで『ラ・バヤデール』を観たところですが、…

映画『ミッドナイトムービー』監督:スチュアート・サミュエルズ、2005年

1970年代のアメリカにおいて、深夜帯のみ上映されるカルト映画のラッシュが続いた。眠れない人々、ジャンキーなどが集まって、マリファナを吸いながら映画と一体化して楽しんでいた。この代表作がホドロフスキー監督の『エル・トポ』だ。正視できない場面が…

映画『ザ・ファイター』監督:デヴィッド・O・ラッセル、2010年

ディッキー(クリスチャン・ベール)とミッキー(マーク・ウォールバーグ)は、ローウェルの街で暮らすボクシング兄弟だ。兄のディッキーはかつてシュガー・レイ・レナードと世界タイトルマッチで対戦した過去を持ち、一度ダウンを奪ったことが自慢だが、口…

映画『或る夜の出来事』監督:フランク・キャプラ、1934年

エリー(クローデット・コルベール)は、金持ちの娘であるが、父親から飛行士との結婚を反対されており、船旅の途中で海に飛び込んで逃げてしまう。彼女は、バスに乗ってさらにニューヨークに向かうが、隣に座った新聞記者ピーター(クラーク・ゲーブル)と…

映画『チェ 39歳別れの手紙』監督:スティーブン・ソダーバーグ、2008年

フィデル・カストロとともにキューバ革命を成し遂げたチェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)だが、彼はキューバの工業相という重職をフィデル宛の一通の手紙とともに投げ打ち、やはり軍事独裁による圧政下のボリビアに向かう。彼はキューバのときと同じよう…

映画『チェ 28歳の革命』監督:スティーブン・ソダーバーグ、2008年

アルゼンチン人の医師であるチェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)、彼はメキシコでフィデル・カストロと出会い、キューバにおける革命に共鳴する。最初は小勢に過ぎなかった革命の同志だが、戦いを続ける中で軍事政権の圧政に不満を持つ人々の支持が増え、…

バレエ『ラ・バヤデール』ボリショイバレエ団

今年は、例年と比べてライブビューイングを観る機会がありませんでした。 ですが、この11月からボリショイバレエ団のライブビューイングが上映されることになり、ちょうど、日本各地で同バレエ団の公演が行われているさなかではありますが、改めてこのバレエ…

映画『セックス・アンド・ザ・シティ』監督:マイケル・パトリック・キング、2008年

仲良し四人組のキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)は40代を迎えて独身生活を送っているが、長く付き合っているビッグ(クリス・ノース)から結婚しないかと言われ、豪華なペントハウスを新居として決めたところまではよかったが、最初は簡単な式を挙げる…

映画『ラウンド・ミッドナイト』監督:ベルトラン・タヴェルニエ、1986年

酒浸りでありながら、サックス奏者として高く評価され、ニューヨークからパリに移ったデイル・ターナー(デクスター・ゴードン)は毎夜ブルーノートで演奏を行う。彼の演奏に魅了されたフランシス(フランソワ・クリュゼ)は、貧しい身でありながらターナー…

映画『しあわせの隠れ場所』監督:ジョン・リー・ハンコック、2009年

身体の大きな黒人の少年ビッグ・マイク(クィントン・アーロン)は、孤児同様の状態で暮らしている。彼は球技に優れており、パブリックスクールに入校するものの、周りは白人ばかりで友達もできない。彼が寒い夜道を歩いていると、子どもを同じパブリックス…

映画『バンコック・デンジャラス』監督:オキサイド・パン、ダニー・パン、2008年

暗殺者ジョー(ニコラス・ケイジ)は、最後の仕事と決めて訪れたバンコックで4人の暗殺を依頼される。彼は冷徹に一人ひとり抹殺していくのだったが、ふと訪れた薬局で聴覚障害の女性フォン(チャーリー・ヤン)で出会い、惹かれ合うようになる。しかし、彼…

映画『ダラス・バイヤーズクラブ』監督:ジャン=マルク・ヴァレ、2013年

1985年のダラス。電気工をしながらトレーラーハウスで生活するロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)、仕事の腕はたしかだが、無類のロデオ好きで酒、ドラッグ、女と奔放な生活を送っている。あるとき彼は機械に巻き込まれた仲間を救おうとしたと…