オペラ『魔笛』英国ロイヤルオペラ、2017年、TOHOシネマズ日本橋

 

 

魔笛』は、それこそ中学生当時から、何とはなしに聴き続けてきたオペラです。家にレコードがあったので、としか言いようがないのですけれど。当時はBGMとして聴いていたのでしょう。多かれ少なかれそうだと思いますが、そうした年代に聴いた音楽は耳に残り続けるもので、若干二幕が怪しいですが、ほぼ通して頭の中で再生できるくらいの状態にあります。

聴き始めた当時はタミーノのアリア『なんと美しい絵姿』が大好きでした。でも、この年齢になるとラブレターみたいで少し恥ずかしいのでね。でも、このオペラを代表するアリアであることは間違いなく。

どちらかというと夜の女王のアリア、それも超絶技巧コロラトゥーラの『復讐の炎は地獄のように我が心に燃え』(第二幕)よりも初めて登場する場面で歌う『ああ、怖れおののかなくてもよいのです、わが子よ!』(第一幕)が気に入っています。アリアが始まる前の導入部が女王が登場する雰囲気があってなんともいいと思います。『復讐の炎』はこれがなくていきなり、なのでね。

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さて、今年のロイヤルオペラライブビューイングの第一作がこの『魔笛』ということで、TOHOシネマズ日本橋に行ってきました。会場の入りはほぼ6割くらいでしょうか、ほどほどです。日本では最もよく知られたオペラでもあるからでしょうか、前回5月に観た『蝶々夫人』よりは入っていました。

◇英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2017/18《魔笛

  • 指揮:ジュリア・ジョーンズ
  • 演出:デイヴィッド・マクヴィカー
  • パミーナ:シボーン・スタッグ(ソプラノ)
  • タミーノ:マウロ・ペーター(テノール
  • パパゲーノ:ロデリック・ウィリアムズ(バリトン
  • ザラストロ:ミカ・カレス(バス)
  • 夜の女王:サビーヌ・ドゥヴィエル(ソプラノ)

構成としては解説及びインタビューがあって、第一幕、休憩をはさんで改めての解説及びインタビューと第二幕という構成でした。ここで気になったのは、せっかくこれから上演される映像がスポット的に登場するところです。これはあくまでも後のお楽しみでもあるので、今ここで見せなくてもいいでしょう、と思うのです。舞台を見るのはどんなものを見せてもらえるのかな、という半分期待から成り立っているので、最初にこんなもんです・・・とやってしまうのはね。おんなじことをメトもやっちゃってます。ロイヤル以上にね。サービスの過剰というものでしょうか。

私が演出家だったら、たんたんと舞台が始まる前のホワイエの情景を映したり(つまり観客と同じ目線)、これまでの上演の歴史などを解説する程度にすると思います。終わった後でがっかり、はまだよい。始まる前にがっかり、になるようなことは避けて、期待を高めるにはどうするか、を考えてほしいのです。種明かしは期待を高める効果にはならないですよね。

と、文句を言ってしまいましたが、演出はデイヴィッド・マクヴィカーによるものです。私は、演出は特に現代風の「新演出」は好みではありません。伝統をあまり変えないで欲しいと思います。で、この『魔笛』の演出ですが、伝統的とは言わないまでも、奇をてらったものではなくオーソドックスなものだったと思います。いろいろと時代を感じさせる小道具を使って当時の雰囲気を再現しようとしていました。ただし、パパゲーノとパパゲーナ、ここだけ新演出のようになっていて、ちょっと違うなあと思ったところです。私の好きな、夜の女王の登場シーンですけれども、三日月を効果的に使ったものでしたが、できれば月に乗っかって登場するとか工夫してほしかったなあと。気が付いたら「あれ、いたの?」という感じでした。

夜の女王を演じたサビーヌ・ドゥヴィエルという歌手、この役を何度もこなしているのでしょうね、細身で癇性の強い感じでした。最後のカーテンコールでももっとも拍手を浴びていました。ですが私は、ザラストロのミカ・カレスというバス歌手のほうが印象に残りました。ザラストロ役は存在感が必要なので難しいと思いますが、よくこなしていたと思います。タミーノ役のマウロ・ペーターもよかったのです、しかしそんなには印象に残りませんでした。全体とすると60-80点というところでしょうか。(ちょっと辛いかな?)