オペラ『蝶々夫人』英国ロイヤルオペラ、2017年、TOHOシネマズ六本木
今シーズンは、毎年充実したラインナップを送ってくるMETだけではなく、ボリショイバレエ団や英国ロイヤルオペラ/バレエなどがその公演をライブビューイングで上映しています。
英国ロイヤルは、今シーズン、オペラを6本、バレエを6本ということで、今回のオペラ『蝶々夫人』は5作目にあたります。
昨年METの『蝶々夫人』を、オポライスの蝶々夫人、アラーニャのピンカートンで見たところですが、見比べ、聴き比べの意味も込めて観に行ってみました。
さて、会場はTOHOシネマズ六本木ですが、METの東劇と比べるとだいぶ空いています。大体20名くらいだったでしょうか。時間帯が早いこともあるのでしょうか。まだまだPR不足なのかもしれません。
このロイヤルの舞台は、さすがにMETに比べると小さいですね。こじんまりというところまではいかないでしょうが、間口がかなり小さく感じます。
- 【作曲】ジャコモ・プッチーニ
- 【演出】モーシュ・ライザー/パトリス・コーリエ
- 【指揮】アントニオ・パッパーノ
- 【出演】エルモネラ・ヤオ(蝶々夫人)
マルセロ・プエンテ(ピンカートン)
スコット・ヘンドリックス(シャープレス領事)
カルロ・ボッシ(ゴロー)
さあて、『蝶々夫人』ですが、これはMET同様、やはり日本人には違和感を感じさせる衣装、化粧(どうしてあんなに目じりに紅をさすことになるのか?)、カツラ(ゴローやヤマドリのへんなちょんまげ頭・・・)そしてふるまい(蝶々夫人がなぜか腰を深く折っていますが、これは老婆のように見える)、ものでした。
どこかかなり歪曲?された日本観というものがあるようで、どうしても日本人のわれわれが見る限り、違和感から入っていかざるを得ない・・・のです。欧米の人が見ると、これを見て「ああ、日本らしい・・・」と思うのでしょうか。蝶々夫人だけは日本人が主体的にかかわるべきではと思います。
あと、カメラワークも、どうにかならなかったのか。はっきり言ってアップのしすぎです。残念ながら、おでこのしわばかりが目立つ結果になってしまいました。
・・・辛口のことばかりを言いましたが、演目の構成自体がしっかりしているので、違和感ありありながら、ちゃんと観ることができました。とくに後半ほどストーリー展開に急迫さが加わるせいもあってか、安心して観ることができる内容だったと思います。
さて、METと今回の公演を比べると、私はMETのほうが好きですね。とくに一幕最後の二重唱はMETのほうが良かったと思います。演出もよかった。ロイヤルの公演は少し脈絡がわかりづらいところもありました。
パッパーノの指揮による演奏は良かったと思います。「ある晴れた日に」のアリアで、オーケストラの演奏に礼砲の「ドン」が聴こえたように思われたのですが、聴き違いでしょうか。素晴らしい効果だと思ったのですが。
スズキもがんばっていましたよ!スズキの献身が蝶々さんの哀れさををいっそう引き立てているように思います。この演目では欠かすことのできない存在です。心なしか拍手もとても大きかったように思われます。