オペラ『エフゲニー・オネーギン』メトロポリタン歌劇場、2017年、東劇
今シーズンのMETライブビューイングも今作『エフゲニー・オネーギン』で第9作になります。ですが、今シーズンは、ぜひ観たいという作品がこれまでなく、今作が初めての観劇?となりました。
東劇は、なかなかの混みようで、今作への期待が伺われます。
これまで、チャイコフスキーは、バレエ中心に観て(聴いて)いましたので、オペラは実は初めてです。予習もしていなかったので、バレエで見せる、いかにもチャイコフスキーらしい曲調を勝手に想像していました。
ですが、一幕が開くと、あれ?チャイコフスキーなのかな?という感じです。何か、伝統的であまり特徴のない、いかにもオペラらしい曲調なのですが「チャイコフスキーらしさ」は感じられませんでした。
自分の耳で「ああ、チャイコフスキーらしくなってきたな」と感じられたのは二幕が始まってからで、三幕になると、一層「らしさ」が出てきたように思います。ですが、《白鳥の湖》などと比べると、少し平板な印象で、チャイコフスキー、この作品はどこまで力を入れて作ったのかしらん、と思われました。
調べてみると、《エフゲニー》は1878年の作で、《白鳥の湖》は1876年の作なんですね。ということは、時期的にそれほど差異はないので、チャイコフスキーもオペラを意識して曲調をあえて変えてあるのでしょう。しかし、ちょっと平板です。
歌い手は、オネーギンが、ホヴォロストフスキーの代役でペーター・マッティでした。初めて聴いたのかもしれません。「いいな」と思われるところもありました。タチヤーナのネトレプコは、どうでしょう・・・何回もこの役をこなしてきた歌手と思いますが、若いころはまだよかったのですが、最近では何度聴いても「これは!」という歌唱に巡り合えません。METでは、R・フレミングとともに大御所と言って差し支えない彼女ですが、演技は円熟しているのだと思いますが、歌唱は自分の好みではないようです。これまでカラスやコトルバシュなど、素晴らしい歌手たちの歌を聴きすぎてしまったためでしょうか。(それと残念ながらお身体が・・・。)ネトレプコもそうですが、歌手はロシア出身者が勢ぞろいです。ロシア語のオペラですからね。
さてさて、音楽の話ばかりになってしまいましたが、演出は伝統的でしっかりした手堅いもので、METらしいというか、手抜きのないものでした。ただ、ライブビューイングで、幕間に舞台裏を見せる演出?は要らないと思います。幕が開くまでの期待がまったくなくなってしまいますからね。舞台裏ではなく、幕間の観客の過ごし方などを解説を交えずに流したほうがよほど観る側としては面白いと思います。ホワイエとかレストランとかグッズ販売とか。
いろいろ厳しい話もしてしまいましたが、来シーズンのラインナップが決定、公表されました。
このラインナップは、第3・9・10作を除けば、伝統路線への回帰でしょうかね?自分の好きなプッチーニも二作品あり、とりわけトスカの演出は、新演出とはいえ、ニューヨークにローマを再現する壮大な試みのようで楽しみです。
それでは。