歌舞伎『七月大歌舞伎(昼の部)』歌舞伎座

台風8号の通過以来、蒸し暑い日が続いているところですが、今月の昼の部は「正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)」「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」の二本立てです。今月初日(7月5日)には安部首相もケネディ米大使と観劇されたとのことでした。

「正札附根元草摺」は曽我兄弟の仇討ちを題材とした舞踊で、工藤祐経を討とうと血気に逸る曽我五郎(市川右近)を朝比奈の妹舞鶴市川笑三郎)がなんとか押しとどめようとする場面を描いています。背景には富士山が雄大にそびえ、五郎の荒事を象徴するかのようです。冒頭を飾るにふさわしい、メリハリのある印象的な舞踊でした。

〽それ磯山おおう雲霧や ただ引幕の初霞

 蹴破る勢は鳴滝を 登る鯉龍のごとくにて

 曽我の五郎時致は

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「夏祭浪花鑑」は、大阪は堺を舞台とした世話物で、恩義のある人の息子磯之丞や恋仲の琴浦を守ろうと立ち上がる侠客たちを描いた作品です。主役は団七を務める市川海老蔵で、牢から出て髪結床でさっぱりとして出てきたときの男ぶり、その後の達引き(喧嘩)や舅殺しの場面、捕手に追われての屋根上での立ち回りなど見事なものでした。

侠客ぶりというところでは釣舟三婦を務めた市川左團次が板についています。やはりこの人がいると舞台が締まります。三河屋義平次を務める市川中車の強欲な老人ぶりもまた印象に残りました。

今日はお客さんも高齢者中心で掛け声もかからず寂しいものでしたが、上方らしい狂言で、「チョーサじゃチョーサ」という勇ましい神輿の掛け声や鳴り物に夏らしさを感じました。