映画『セント・オブ・ウーマン』監督:マーティン・ブレスト、1992年

ボストンの名門校に学ぶ苦学生チャーリー(クリス・オドネル)は、友達が遊びに行く感謝祭に、自分は「家人の見守り」という3日間のアルバイトを選びます。

ところが、アルバイト先の家庭に訪れてみると、その見守りの対象は退役軍人で盲目のスレード中佐(アル・パチーノ)でした。スレード中佐は、怒りっぽく酒浸りの生活で周りから疎まれていますが、この3日間の約束でアルバイトに訪れたチャーリーとともにある覚悟をもってニューヨークに旅立ちます。

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■感想(個人的評価:★★★★-)

映画は、2~3時間という限られた時間でストーリーを展開するメディアですが、その制約を見事に生かし切った作品だったと思います。誰からも見放されたスレード中佐が、ニューヨークで見せる振る舞いの一つひとつが、気位の高さ・意志の強さがありながら一方では失意・失望という闇を抱えた男を表していました。そして、スレード中佐は自分自身をこの世から抹殺しようとしながら、若いチャーリーの渾身の説得に救われ、そして逆に全校生徒を前に校長と対峙するチャーリーの苦境を救うことになる、この重厚で爽やかな人間関係がよく描かれていたと思います。

作品としてのストーリー展開が見事なのと、美しい女性とレストランで踊るタンゴのシーン、そして街中をフェラーリを高速でブッ飛ばすシーンなど一つひとつのシーンにアル・パチーノの俳優としての重みを感じ取れる作品でした。