映画『二郎は鮨の夢を見る』監督:デヴィット・ゲルプ、2011年

この映画はレストラン評価の権威である『ミシュランガイド』で三つ星を獲得し続ける鮨屋「すきやばし次郎」の主人である小野二郎さんにスポットを当てた作品である。映画は、日々のすし職人としての取り組みをドキュメンタリーとして構成している。

小野二郎さんは決して恵まれた境遇で育ったわけではなく、悪ガキだった幼少期から一転して職人として大変苦労して今の店を作り上げた。その店では決して客に酒を供することはなく、寿司だけで勝負する。その価格設定は、安くても30,000円というものだが、その味に惹かれて客は連日のように小野さんの店を訪れる。

f:id:alpha_c:20130217220829j:image:leftすばらしい寿司が生み出される裏には、気心の知れた優秀な仲買人から新鮮で極上のネタや最高の寿司米の仕入れること、そして仕入れた材料の丁寧な、気の遠くなるほどの仕込みを毎日繰り返すことが絶対必要な条件である。

こうした毎日の「変わらない」流れを作るのは、まさに厳しい職人としての修行の毎日であり、そのつらさに夜逃げ同然に去っていく弟子もいる。しかし、二郎さんは優しくすることはその人のためにならない、という哲学を持ち、決して甘い顔を見せることはない。

二郎さんは毎日店に立ち、客に握りを提供している。そのことが85歳という高齢な二郎さんを生き生きとさせている。映画を見ながら、こういった極上の品を提供するということは決して職人だけの世界ではないのではないか、われわれにもそんな可能性があるのではないか、と思わされた。