映画『月の輝く夜に』監督:ノーマン・ジュイソン、1987年

ニューヨークの裏町に住むロレッタ(シェール)は、夫と死別して独り身で、親と同居し働きながら生計をたてている。

ある夜、いつものイタリア料理店で長く知っているジョニー(ダニー・アイエロ)からプロポーズされ、とくに彼のことを好きではなかったが、ロレッタはこれを受ける。ジョニーは、結婚式は一月後と決まったが、ジョニーは長く音信の絶えている弟ロニー(ニコラス・ケイジ)を式に呼びたいので、弟に連絡するようロレッタに依頼し、自身は慌ただしく瀕死の母親を看取るためにシチリア島へ旅立っていった。

f:id:alpha_c:20121107200507j:image:left弟ロニーはパン焼き職人として働いていたが、仕事中の怪我で左手が義手となり、そのことがもとで婚約も破棄され人生設計が壊れてしまったと嘆いている。そして彼への連絡のため訪れた姉となるべきロレッタにその心情を吐露する。ロレッタは最初ロニーを不審な目で見ていたが、なぜか二人は月が大きく輝く夜に結ばれてしまう。翌朝、昨夜の過ちを後悔しながら帰ろうとするロレッタに、ロニーは、今夜オペラ劇場に来てくれれば、自分もロレッタを忘れて兄に渡すと約束する。

その夜、ロレッタは精一杯のおしゃれをしてメトロポリタン歌劇場に向かう。ロニーもタキシードで彼女を迎える。その日の演目は『ラ・ボエーム』で、ロレッタはこの初めての演目を見て感動し涙を流す。そして拒んだけれどもやはり大きな月のこの日、二人は愛し合った。

この映画では、主役であるシェールのちょっと冷めたようなキャラクターが特徴的で、弟ロニー役のニコラス・ケイジを食っていた。女という性の不思議さ、しっかりと現実的である反面で、情が移ろいやすいありさまをよく演じていた。

オペラ劇場のシーンはたっぷりと見せているが、『ラ・ボエーム』がとても効果的に使われていたと思う。この二人がイタリア系であるところも、アメリカ映画ながらアメリカらしからぬ雰囲気を漂わせていた。