オペラ『愛の妙薬』メトロポリタン歌劇場(METライブビューイング2012~13)
今シーズンのMETライブビューイングの第一作は、ドニゼッティの『愛の妙薬』(L'Elisir d'Amore)で、ネモリーノをマシュー・ポレンザーニ、アディーナをアンナ・ネトレプコが務めた。
■あらすじ
ネモリーノ(マシュー・ポレンザーニ:テノール)は、女農場主アディーナ(アンナ・ネトレプコ:ソプラノ)を慕っているが振り向いてもらえない。
一方、村に訪れた兵隊の一団を率いるベルコーレ軍曹(マリウシュ・クヴィエチェン:バリトン)はアディーナに一目惚れする。アディーナもネモリーノから告白されたことが気にはなっているが、言い寄ってきたベルコーレ軍曹と結婚の約束を交わしてしまう。
困ったネモリーノは、村を訪れた怪しい薬売り、ドゥルカマーラ(アンブロージョ・マエストリ:バス)に相談する。するとドゥルカマーラは、安いワインを「愛の妙薬」と称して、これを飲めば一日後にあらゆる女性から愛されるようになると騙し、ネモリーノは持ち金をはたいてこれを買い求める。
愛の妙薬を飲んだネモリーノであったが、効果が全然現れない。そうした中、アディーナはベルコーレ軍曹との婚礼の宴を迎える。うちひしがれたネモリーノは、薬の効果がないとドゥルカマーラに詰め寄るが、ドゥルカマーラは、薬が足りないせいであるとしてさらに買い求めるよう促す。しかし、ネモリーノにはもう金がなかった。
ネモリーノは薬を手に入れるため、不本意ながらベルコーレ軍曹の軍隊に入隊することを約束して20スクードの金を得る。そして、ドゥルカマーラから薬を買い入れる。
すると不思議なことにネモリーノの周りに女性たちが群がるようになり、気のない素振りだったアディーナもそれを見てネモリーノが気にかかって仕方がない。
そして二人は改めて近づき、お互いの気持ちを伝え、愛の約束を交わす。
■感想
今回が実際の舞台を見る初めての機会だったが、農村という一見地味な舞台設定ではあるけれど、そこはMETの舞台ということもあって奥行きがあり、スケール感があった。
とくに存在感を見せたのはバスのアンブロージョ・マエストリで、その大きくユーモラスな姿もさることながら歌うたびにその力量に驚かされた。主役でテノールのポレンザーニも第二幕の「人知れぬ涙」など聞かせどころをきっちりとこなし、満場の拍手をさらっていた。