オペラ『カルメン』スカラ座(ワールドクラシック@シネマ2011)

スカラ座の2009年シーズン初日に行われた公演で、ドン・ホセをヨナス・カウフマンカルメンを新人のアニタ・ラチヴェリシヴィリが演じた。なお、開幕に先立って会場起立してイタリア国歌演奏が行われた。観客はこの日のためにドレスアップして訪れ、華やかさを一層盛り上げていた。

スカラ座のシーズン初日というといかにもイタリアオペラがかかりそうな気もするけれど、カルメンが選ばれたいうのはやはり人気演目であるせいか。個人的には華やかな音楽とは裏腹の陰惨な結末が苦手ではあるけれど、演劇としてメリハリがあり、字幕の効果もあってとても筋が分かりやすいという印象だった。

f:id:alpha_c:20121028203918j:image:left何をおいても「自由に生きる」カルメンと、「社会のルールに従い、家族を愛して生きる」ドン・ホセ。われわれは、やはりそれぞれにドン・ホセなのだが、カルメンにとっては殺されても一番大事な自由を捨てることができない。本来、人は自由に生きることとは原始的なもの、と理解しがちだけれど、実は一生懸命作ることに取り組んできたルールというものが、稚拙なものを守るためにしか機能していないのではないか、と考えを揺さぶられる。

ちょっと脱線してしまったが、昔は天井桟敷からレタスや猫が降ってきたという逸話まであるスカラ座だが、今日降ってきたのはバラだった。スカラ座も一時衰退が言われていたものの、やはり舞台、歌手陣も充実していて、世界最高峰の名にふさわしい。

カルメン役のラチヴェリシヴィリは25歳の新人だが、堂々たる体躯で歌も素晴らしい。シーズン初日というプレッシャーも跳ね返して登場から舞台を支配していた。カメラワークもあって客席からは見えない部分まで細やかに映し出し、これも効果的だった。