映画『ALWAYS 三丁目の夕日’64』監督:山崎貴、原作:西岸良平、2012年

昭和39年、オリンピック開催を間近に迎えた東京。東京タワーにほど近い夕日町三丁目に暮らす人々を題材としている。今回は第三作で、売れない小説家の茶川龍之介の夫婦(吉岡秀隆小雪)と、お隣の小さな自動車修理工場の経営者鈴木則文の夫婦(堤真一薬師丸ひろ子)をめぐって起きるエピソードを描いている。

f:id:alpha_c:20121014095954j:image:left今回の作品では、小説家である龍之介の家で住み込みで大学受験の勉強をしている少年が、龍之介の姿を見るなか自らも小説家を目指すようになる。龍之介は安定した生活を送るため少年の東大進学を望んでおり二人の葛藤が一つのテーマとなる。

いっぽう、鈴木の自動車修理工場でやはり住み込みで働いている青森出身の少女が怪我をした際に手当てを受けた医師に恋心を抱くようになる。二人は紆余曲折を経て結ばれていくのだが、これがもう一つのテーマとしてストーリーが展開されている。

どちらの話も成長期にあった日本で若者が自分の道を決め、進んでいく過程を、この当時の物の考え方や習俗、そして懐かしい街角の風景などを織り混ぜながら描いている。

自分もその時代の子であり、一つひとつのシーンに懐かしさを感じながら見ていた。自分は幼少期にこの時代を経験しており、人とのかかわり合いがとても濃い時代であったことはそのとおりだ。自分にとっては何かより社会の大きさや深さみたいなものを感覚として伴っていた時代のようにも思われ、大人の目線で見る人々の関係ばかりでなく子どもの目線で見た世界観みたいなものまで表現できるとさらにいいなあと思われた。