読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

歌舞伎『芸術祭十月大歌舞伎』新橋演舞場

f:id:alpha_c:20121002222802j:image:left十月初日の新橋演舞場は、月曜日ながら八分ほどの客の入りで賑わった。この月は「七世松本幸四郎追遠」と題され、松本幸四郎家にとって大事な興行となる。劇場入り口には幸四郎夫人、染五郎夫人も姿を見せたが、気がかりは勧進帳で太刀持音若を務める金太郎君のことだったか。

さて、この日夜の部は、まず幕末の吉原を舞台にした世話物《御所五郎蔵》、いかにも黙阿弥らしく歯切れよく分かりやすい筋書きの狂言

染五郎の代役で御所五郎蔵役に登板することとなった梅玉だが、そこはベテランの味で侠客の親分らしさを醸し出していた。

一方敵役の土右衛門は妖術使いだが、これは松緑が務める。表情使いが上手く、消えたり現れたりと欺いて見せる。

御簾の義太夫も聞かせどころたっぷりで舞台もさることながら、そちらへ聞き入っていることも多かった。

幸四郎の甲屋与五郎、五條坂仲之町の場で仲裁役での登場だが、幸四郎はこういった役が本当に上手い。「ここは私に免じて・・・」と、こちらまでもがほだされてしまうようだ。

最後の腹切りの場面は、腹や胸を掻き切ってからの胡弓や尺八の演奏、ちょっと無理もあるけれど、そこはホロリとさせて幕は閉じる。

f:id:alpha_c:20121002222801j:image:left舞台替わって歌舞伎十八番の《勧進帳》、松羽目の舞台に、幸四郎の弁慶、團十郎の富樫、そして藤十郎義経と大御所の揃い踏みとなる。

昼の部では弁慶を團十郎、富樫を幸四郎が務め、夜の部は入れ替わっての演じ合いとなる。


幸四郎はどちらかというと富樫かしらと思いつつ、弁慶役もしっかりこなし威厳と気迫を感じた。安宅の関を通過して酒を酌み交わす場面は少し滑稽みもあったりしてそれも味のひとつだったかもしれない。