読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画『惑星ソラリス』原作:スタニスワフ・レム、監督:アンドレイ・タルコフスキー、1972年

惑星ソラリスは一面の海に覆われており、地球からその研究のためソラリスの軌道上を周回する宇宙ステーションに三人の研究者が送り込まれている。しかしソラリスでは、行方不明者の探索に向かった飛行士バートンが錯乱状態で帰還したり、ステーションからの交信そのものがとだえてしまうなど尋常ではないことが起きている。

f:id:alpha_c:20120818105115j:image:left心理学者クリス・ケルヴィンは、このソラリスにおける研究活動を続けるかどうか見極めるため、命を受けて一人この宇宙ステーションへ向かう。ところが宇宙ステーションに到着した彼を待っていたのは、何かにおびえ、自室にこもってしまっている二人の研究者(スナウト、サルトリウス)だった。そして、もう一人の研究者(ギバリャン)はクリスに書置きを残し、すでに自殺を遂げてしまっていた。

ステーションで一室を与えられ暮らし始めたクリスだが、眠り、そして目を覚ますと彼の前には10年前に自殺したはずの妻ハリーが現れる。突然現れた死んだはずの妻にクリスは困惑するが、いっぽう現れたハリーも自分の存在について深く悩み始める。

f:id:alpha_c:20120818105114j:image:left全体として静かで沈んだ雰囲気が支配している。田舎のコテージでかつての証言ビデオをみる場面や、バートンが子どもと車で帰る場面など、暗く重苦しい空気に満ちている。冒頭で、そして随所で流れるバッハのプレリュード(BWV639)がこの雰囲気を象徴的に表している。

ソラリスでは、彼の心にある人が具象化されて現れる。それは、ソラリスの海が研究者たちの意識をもとに作り出したコピーに過ぎないが、コピーである創造物が自我に目覚め、心の葛藤に苦しむ。そしてクリスもまた、コピーを愛し、人間の存在について深く悩み、そして最後には地球を捨てることを選択する。

この映画では、特に最後の数十分は哲学的な言葉のやり取りと情景描写に満ちていた。SFという舞台装置を借りながら、人間の存在について深く考えさせる作品だった。

D