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五嶋みどり『デビュー30周年プロジェクト ~復興・平和への願いを込めて 全国ツアー』紀尾井ホール

f:id:alpha_c:20120805152521j:image:leftこのコンサートは、デビュー30周年を迎え、国連平和大使でもある奏者が、九州から北海道まで浦上天主堂本願寺など各地の宗教施設を会場として行うもので、いくつかの会場では無料で開催されている。この東京のコンサートだけは、宗教施設ではなく紀尾井ホールで開催された。

名声は以前から聞き知ってはいたものの、ライブで聴くのは初めてだった。平日の夜ではあったが会場はほぼ満席で、夏休みのせいかおしゃれをしたこどもの姿も見えた。

今日のプログラムは、J.S.バッハ作曲「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」より以下のとおりである。

なるほど寺院などの演奏にふさわしい選曲である。

f:id:alpha_c:20120805152520j:image:left演奏は、艶というよりも深みを感じさせるもので、演奏が始まるや会場はバッハの世界に染められた。ヴァイオリンを「弾く」、というより「歌わせる」という表現が近いように思われた。その演奏する姿は、流行の演奏スタイルとは異なり、決して自分を格好よく見せることを目的とするようなものではない。

いわば、ヴァイオリンが主で演奏者は従、の関係を確立し、楽器を最上の状態で演奏するための手助けをしている。

この宗教的色彩のある曲目を聴きながら、目に浮かぶようだったのは、自然の風景、曇った小寒い日の木々の梢のようなものだった。オレンジや水色など目に鮮やかな色を見せるモーツァルトの楽曲とは異なり、モノトーンの世界が揺れているようだった。

演奏が終了して満場の拍手に何度も応えていたが、アンコール曲を演奏することはせず、たった今聴衆の心に刻まれたバッハの世界を大切にしているようだった。