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映画『ブレードランナー』監督:リドリー・スコット、1982年

f:id:alpha_c:20120226201243j:image:left2019年のロサンゼルスを舞台に、人間を模して作り上げたアンドロイド〈レプリカント〉と、これを抹殺する役割を持った特捜隊〈ブレードランナー〉との闘いを描いた作品である。

レプリカントは、タイレル博士が人間を模して精巧に作り上げたアンドロイドである。主に地球外で困難な労働に従事する。このレプリカントが自らの存在に疑問を覚え、人間に対して反乱を起こし、あらかじめ寿命の短く定められた身体のメカニズムの改造を要求するため、ロサンゼルスの巨大企業タイレル社へ乗り込もうとする。しかし、人間にとって彼らはしょせんアンドロイドに過ぎない。彼らを抹殺するためすでに退役したベテランのブレードランナーであるデッカードハリソン・フォード)が起用される。

原作はフィリップ・K・ディックアンドロイドは電気羊の夢を見るか?』であるが、映画は原作とはかけ離れたもので、よりスリリングな内容の作品に仕上がっていた。原作では、全面核戦争後の世界で、人間を含め動物がほぼ絶滅に近い状態となり、アンドロイドとしての愛玩動物でそれを代替する暮らしが描かれているが、映画ではそうした状況はあくまでも背景に置かれ、レプリカントと人間との闘争が主題となっている。

昼間がなく、陰った弱々しい夕刻のほかは雨の降る夜しか描かれていない。しかしながらそうした光景における横からの強弱のある光が陰影を見事に浮き出している。また、冒頭、空中を飛行しながら俯瞰するロサンゼルス、高層ビルから炎を噴き上げる光景、猥雑な街中の光景など目を見張るものばかりだ。マヤのピラミッドのようなタイレル社も近づきがたい威圧感がある。

f:id:alpha_c:20120226201302j:image:leftこうした外形的なものばかりでなく、抑えた役者の演技がいい。とりわけ印象に残るのは女性レプリカントとしてタイレル社で勤務するレイチェル(ショーン・ヤング)だった。自らの存在への疑問、短い寿命を運命付けられた悲しみを、あくまでもアンドロイドとして表現している。最初に同社に乗り込んだデッカートからレプリカントかどうかを見極める試験を受けるとき、煙草に火を付ける仕草などはまさにアンドロイドそのものだった。また、当初の抑制した感情、そしてデッカートとの心理的なつながりを通して、人間味の片鱗を見せる感情へとつながっていく過程の表現も見事だった。