バレエ『パゴダの王子』新国立劇場バレエ団

f:id:alpha_c:20111123204433j:image:left今シーズンの冒頭を飾る演目で、ビントレー芸術監督自身が構想を温め、演出した三幕構成の新しい作品である。日本では、作曲者のブリテンの音楽を含めて馴染みがないせいか、観客も半分期待しつつつも、チラシの「カメレオンとさくら姫」の構図と、あらすじをもとに抱くイメージ以上のものはなく、半分不安の状態で訪れたのではないだろうか。

幕が開いてみると、これは、日本という国に対して昔の欧米の人々が抱いていたようなエキゾチシズムをふんだんに盛り込んだ作品で、それが舞台装置や演出に特徴的に表れていた。

また、第一幕では、どちらかというと全体の物語を説明する演劇的な部分が勝っていて、バレエ作品としての個性は見えづらいように思われたが、第二幕深海の場面では、ビントレー監督が《アラジン》の「洞窟の場面」で見せた描写力・構成力を改めてバレエという形式で見事に表現していた。

このようにエキゾチシズムを表現したバレエというと、《ラ・バヤデール》や《海賊》が思い浮かぶが、それらがエキゾチシズムを表現するためにそうした舞台設定をしている(借りている)のにたいし、この《パゴダの王子》は作品そのものがエキゾチックで、より東洋的でおどろおどろしい雰囲気を醸し出しており、独特の個性を持った作品に仕上がっていた。

なお、最初から主役は出ずっぱりで、大変な体力を必要とする作品でもあったと思われる。