ホキ美術館

f:id:alpha_c:20111008123438j:image:w360:leftよく晴れた秋の日に、千葉市土気の落ち着いた住宅街に写実絵画専門の美術館として昨年11月に開館したホキ美術館を訪れた。この美術館は、細長く、曲線を活かした特徴のある三層構造の建築であり、約160点の作品を鑑賞できるようになっている。

◆印象に残る作品

たとえば、大畑稔浩《剣山風景ーキレンゲショウマ》という作品は、曇った日、陰りのある斜面で黄色い花を咲かせるキレンゲショウマを題材としている。暗く、重く、湿り気を感じさせる素材で、キレンゲショウマの葉の鈍い光沢やその固くざらざらとした質感が印象的である。

f:id:alpha_c:20111016015755j:image:w360:left一方、原雅幸《Footpath to Pooh Bridge》では、冬枯れの並木をどこまでもトンネルのようにつながっていく小道が描かれている。ここではさきほどの絵とは対照的に、密生する枯れた木々を照らす晴れた冬の陽光、そして乾いた空気を感じさせる。

f:id:alpha_c:20111016015758j:image:w360:left曽根茂《深冬》は、冬の積雪した農村の風景を描いている。ここでは、近景の暗さと、低い空に残存する日の入り前の陽光のコントラストが見事である。雪は、一般的に明るい素材のはずだが、ここではシャーベット状の、重くて暗い素材として扱われている。

◆感想

f:id:alpha_c:20111016015751j:image:w360:leftこれら作品に象徴的に見られるように、たんに対象を精密、緻密に描くのみならず、素材の選択に非常な力を注いでいることがわかる。何か、いつもの風景でありながら全くいつもと違う表情を見せる瞬間がある。注意深く対象を観察し、そして切り取ったものを細部に至るまで丁寧に描き上げているのだ。それはまた作者の見た光景でありながら、かつて自分も見たことのあるような記憶を呼び覚ますものでもある。

このように光をとらえる技法としては印象派の絵が思い起こされるが、どちらかと言えば対象を大胆に見たままに描こうと取り組んだこの技法に対して、違う角度を提示していると思われた。