クローズアップ現代「シリーズ変わる農業 味と質で勝負 ニッポン農業に勝機あり」

日本産の農産物は、独自の技術により高品質なものを作り上げてきた。これをどう売り込むのか。

生産自体を海外で行い、現地で販売しようとする取り組みが行われつつある。

タイでは、日本の農業法人有機農法で作ったバナナが、通常の価格の三倍もするにもかかわらず、富裕層を中心に人気が高まっている。

バナナを作っているのは千葉県から移った農業法人である。さまざまな点検項目を設けて日本式の生産管理を徹底しようとしている。

日本人的な繊細さはこれから新興国で注目を浴びていくのではないかと考えている。

ぶどう農家もタイへ進出している。タイでは雨が多いが、土ではなく鉢に植えることで多雨による問題を解決しようとしている。

無農薬栽培によるレタス栽培で販路を広げている農家もある。日本では考えられないような規模の農地を利用することができる。最初は16ha、必要あれば320haまで利用できる。日本が抱える問題がここでは問題とならない。

東京大学大学院教授 本間正義)輸出にはモノを輸出するだけでなく、技術そのものを輸出するやり方がある。メードインジャパンではなくメードバイジャパニーズである。今日紹介のあった農業の取り組みは後者に近い。日本国内では人件費や農地の制約がありコスト高につながっている。日本では昔から狭い土地から多くの生産をあげつ品種改良を行ってきたが、最近は質を高める品種改良が中心になってきている。これは新興国の富裕層にマッチしているのではないか。ただし技術だけではだめで現地の事情に精通し、流通ルートを作るのが課題である。

ベンチャー企業が生産にかかるマニュアルを作製し、これを一定の制約をつけて新興国に渡して現地生産を行い、これを販売していく取り組みもある。これを利用した農家の生産物を比較し、マニュアルの質を高めている。

(本間)マニュアル化自体は進歩であるが、製造業と農業は同じではない。病害虫などさまざまな変動要因が農業には多い。マニュアルプラスアルファが必要である。まだまだ、こうした取り組みは稀少である。進出した人々の間でのネットワーク作り、お互いの持ち味を活かすことが必要だろう。

■コメント

先進的な取り組みであり、日本農業の活路の重要な一つであると思う。

一方で、現地に行って日本的に生産する、ということに不思議さも感じられる。というのは農業はまずもって自分たちの土地で自分たちの食べ物を作る営みであり、余剰があれば売っていくという基本的なスタンスが頭にあるせいだろう。

この枠組みは他人の土地で他人の食べ物を作る営みであり、まずはじめに「売る」という行為が先にあることが不思議といえば不思議である。