クローズアップ現代「若い世代の自殺を防げ~境界性パーソナリティー障害~」
若い世代の自殺が増えているが、その原因の一つとして「境界性パーソナリティ障害」がある。
この障害は、突如として感情を爆発させたり、孤独感が強く、見捨てられるのではないかという恐れを常に持っている。
リストカットを繰り返したりする。自殺未遂の再発率がうつ病患者よりも倍近く高く67%に達する。
この障害をもつかおりさん、社会とのつながりが欲しいとアルバイトを始めた。
(都立松沢病院精神科部長 林直樹)対人関係の場でこの障害は発症する。家族は大変である。脳の機能障害、社会とのかかわり、養育環境などが発症に影響していると見られているが根本的な原因については分かっていない。ただし、年をとることで症状は緩和している。人々の1~2%がこの障害を抱えていると見られる。
多くの医師は治療に消極的である。患者が自傷行為を行う、社会的規範に則った行動ができないなどのことが原因となっている。聞き役に徹するなど対応が求められている。
(科学文化部記者 山室桃)厚生労働省は、この障害が自殺に多くかかわっているという認識は持っているが、中高年の自殺を対策の中心においており、対応は図られていない。オーストラリアでは、境界性パーソナリティを治療する施設を持ち、前向きな気持ちを持つことができるような治療を医師と臨床心理士が協力して行い、大きな効果をあげている。ところが、日本では心理療法は時間がかかる割りに収入が少ないために浸透していない。
(林)医師だけでなく家族も巻き込んで治療を行っていける体制作りが必要である。
■コメント
神経症は、不安があたかもインフレーションのように増幅していくことで生じる。この障害も感情の爆発(熱)や孤独への落ち込み(冷)を伴うところ似ているところがある。
治療の体制については、うまくいっているケース(豪)があるのにこれを取り入れることができない。儲かるかどうかを何よりも優先してしまう体質はとくに医療界において強く見られる。国がカネを出さないから治療ができない、という逆立ちした論理がまかり通ってしまう。
一方で、この障害と自殺の関連性は高いと思われるものの、近年3万人という高止まりで推移している自殺者数の背景としてはやはり失業や高齢化に伴う病気や障害など社会的な状況が大きいのではないかと思われた。