バレエ『ラ・バヤデール』新国立劇場

・ザハロワの主演が予定されていた公演だったが、降板により英国ロイヤルバレエ団の小林ひかるさん(ファースト・ソリスト)が主役のニキヤを演じた。新国立劇場では初めての登場となる。第一幕ではソロルを演じるデニス・マトヴィエンコとパドドゥを踊るが、身体の柔らかさを活かした表現力、叙情性があり、新しいスターの登場を予感させた。

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【主役ニキヤを踊った小林ひかるさん】

・舞台装置については、建物などにも細かい細工がほどこされ、一種重厚感があった。一幕の寺院や二幕の宮殿など、以前同劇場の『アラジン』のときの舞台装置と比べ見事なものである。

・ガムザッティ役の厚木美杏さん、顔立ちがエキゾチックで演技も上手で、大人の女性という感じである。バレリーナはもちろんスリムな人が多いが、中でも研ぎ澄まされた身体で、最後まで踊り切れるかしらと思うほど。この演目では、主役のニキヤよりガムザッティの方が見どころが多いと思うが、見せ場の二幕では少し群舞に隠れがちだったようにも見える。

・第三幕「影の王国」は、この演目の大きな見せ場、新国立劇場ではこれを8×4=32人のコール・ド・バレエが演じる。全体としてまとまっているが、前から3列目で見ていたせいか、少しアラベスクのふらつきが気になる。もともと、プティパのこの振り付け、相当にダンサーに無理を強いるもので、ミンクスのこの場面の旋律は十分に美しいのだから、もう少し技術難度を落として美しさを強調した振り付けをし直してもよいのではないか。(古典のハイライトだから再振り付けには振付家の実力に加え勇気がいるとは思うけれど。)

・そのほか、ブロンズ・アイドルが少しメリハリに欠けた点、後半にいくにつれ全体の調和が少し失われた点などあったけれど、初めての組み合わせでよくここまでというすばらしい作品でした。

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【公演のチラシ(写真は降板したスヴェトラーナ・ザハロワ)】