日曜美術館「夢のオルセー美術館 傑作10選」

<途中から>

No.3:ドガ「エトワール」

No.4:セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」

セザンヌはポスト印象派を代表する。印象派のような一瞬の光を追いかけるのではなく、永続する堅牢な美を描いた。「リンゴでパリを驚かせてやる」という言葉にも表れているとおり静物画に打ち込んだ。一つひとつが目に見えるように、ではなくもっとも美しく見えるように描いた。色も全体のバランスを考えて描いている。対象をみたままに描く、ということから離れて独自の世界を作り出した。また静物画のみならず、「サント=ヴィクトワール山」では、山の質感・永続性を描き出そうとした。山は、全体を捉えることは難しいものであるが、それを独自の技法で描ききっている。

No.5:ゴッホ「星降る夜」

ゴッホの「自画像」は、印象派との出会いが表れている。原色を大胆に使って描いている。パリのレストランの絵では、色彩を使って自分の感情を描いている。この後、より鮮やかな色彩を求め、アルルに移り住み、一人で制作に没頭する。これまで夜景を描く画家はいなかったがゴッホは「星降る夜」でこの美しい世界を描いた。大きく天空に描かれた北斗七星には未来の希望が表れている。印象派を離れ、表現主義へと移っていった時期でもある。

No.6:ゴーギャン「〈黄色いキリストのある〉自画像」

ゴーギャンの絵は、ゴッホと同じ部屋に配置されている。ゴーギャンは旅の画家である。ゴーギャンは「光の戯れ」よりも「力強い精神性」を描きたかった。そして、南の楽園に原始の美を描いた。「自画像」は、西洋文明の象徴であるキリストに背を向け、野生の美へと傾倒していく姿を描いている。「タヒチの女たち」では、フランスの影響を受け、もはや野生の楽園とはいえないタヒチを描いている。

No.7:シャバンヌ「貧しき漁夫」

19世紀後半には象徴主義があった。象徴主義は観念や思想を描こうとする。「貧しき漁夫」は妻に先立たれた男の悲しさを描いている。無邪気な子どもたちがいっそうの悲しみをそそる。

No.8:ルドン「目を閉じて」

薄明かりの中、水面から男とも女とも付かぬ人物が顔をのぞかせている。(ミシェル・ダルベルト)この絵を見ると、フロイトが探求した「内面」を感じさせる。

武満徹もルドンの絵にインスピレーションを受けて「閉じた目」を作曲している。

No.9:ギュスターヴ・モローオルフェウス

妻を失った悲しみから竪琴を奏でなくなり、八つ裂きにされたオルフェウスを描いた。たんに神話を描くのでなく自分の思想を込めた。この絵はルドンを始めとする象徴主義の画家に影響を与えた。悲哀に満ちていながら恍惚とした表情を浮かべているのが特徴的である。

No.10:アンリ・ルソー「蛇使いの女」

ルソーは49歳まで税関職員を勤めていた日曜画家である。破天荒な絵を描き続け、それは人々の嘲笑の的であった。しかし本人はいたってまじめだった。熱帯のジャングルの光景を描いたが、これはパリの植物園に通って自分の想像力で描いたものである。「蛇使いの女」は、真っ黒な女が笛を吹きながら蛇を誘っている。奔放さと緻密さを兼ね備えている。月明かりの中、音や匂いが伝わってくる。五感が刺激される。

19世紀後半から20世紀のはじめにかけて短い期間にこうした傑作が描かれた。世界が動き出すときに、画家たちは自分の感性を信じて描いた。多様な個性の時代が印象派から始まった。