ETV特集「大阪“非常事態”宣言~生活保護・受給者激増の波紋~」

毎月一日は生活保護の受給日、区役所の窓口の多くの人々が並ぶ。大阪市では14万6千人が受給しているが、これは大阪市民20人に一人である。通常40代だと128,310円を受給する。近年生活保護受給者は増加の一途である。ケースワーカーも一人で100世帯近くを担当している。浪速区では10人に一人、西成区では5人に一人が保護受給者である。

20代、30代、40代でも仕事に就かず、生活保護を受給する。一方で大阪市の財政は危機に瀕している。大阪市の平松市長は国に直接生活保護制度の改革について申し入れした。働ける人は働いてもらうというスタンスの改革案である。

大阪市では生活保護行政特別調査PTを作り対応を検討している。このままでいくと市の財政は立ち行かなくなる。大阪市の自然収入の半分近く2,600億円が生活保護に消えている。

大阪市における調査の結果、不適切な受給が浮き彫りになってきた。千葉にいたホームレス男性、関西弁の男に大阪に行って生活保護を受けないか、といわれてワゴン車に乗せられ大阪へ行った。夜明け前に大阪に着き、老朽化した木造のアパートに到着する。その場で不動産業者と契約をして生活保護を受給するよう勧められる。アパートの家賃は生活保護による家賃支給の実費の上限である42,000円に設定されている。

あいりん地区のドヤは、一人でも多くの生活保護受給者を囲い込もうとして専用のマンションに作りかえられている。医療費も全額公費から支払われるため、受給者を専門にする医療機関も現れている。生活保護では敷金・礼金・ふとんなどは公費でまかなわれる。これも限度額であるそれぞれ294,000円、17,000円の請求がなされる。薬代も全額公費、本人は薬を不要だとしているが、病院からなかば強制的に与えられる。

生活保護者だけを対象とする医療機関は34にのぼっている。しかし、過剰診療かどうかというのは判定が難しい。

大阪市長 平松邦夫)どこまでが常識の範囲かということをPTの活動をふまえて決めていくべきだろう。

昭和25年に生活保護が制度化された。これは憲法第25条の「最低限度の生活」を保証するものであり、最後のセーフティネットである。その後、生活保護は減っていった。制度が始まった当初200万人を超えていたが、バブル期には88万人に減った。これがその後増加の一途をたどり制度発足当初の水準に戻りつつある。

あいりん地区の福祉事務所では、追い詰められた人々が相談に押し寄せている。中学卒業以来派遣労働してきた者、仕事が途切れることはこれまでなかった。しかし現在仕事はなく生活保護申請をしている。

現在の生活保護の急増の裏には、働く努力をせず生活保護に安住する受給者と、いわゆる貧困ビジネスを行う不動産業者や医療関係者が背景にある。働くよう促しているが意欲は高まらないのが現実である。

(平松)病気や怪我で働けないということなら分かるが、そうでない人がいること自体不公平である。収入は低くても生活保護を受けないようにがんばっている人を失望させてはいけない。

平成22年10月20日、平松市長は政令指定都市市長会の合意を踏まえた生活保護の改革案を持って上京した。骨子は、3~5年の就労支援の後保護継続を検討すること、医療費の一部自己負担、生活保護費の全額国庫負担である。しかし、この案に弁護士団体は反発した。反貧困ネットワーク湯浅誠氏は、雇用保険など生活保護以外の支援が弱いために生活保護に向かわざるを得ないことを指摘している。今までは家族がカバーしていたが、無縁社会となり、これも耐えられなくなっている。

保護を認められた30%の保護開始理由が「収入の減少」であり、始めて保護開始理由の一位となった。

大阪氏では意欲の高い人から就職してもらおうと独自の取り組みを行っている。専門のカウンセラーが、履歴書の書き方、面接の受け方を指導している。

就職に有利な資格を持っていても保護を抜け出せない。社会保険労務士の保護受給者、100社以上も応募しているが不採用となっており、保護受給生活が3年目に入ろうとしている。

大阪市の保護受給者は15万人に達しようとしている。年末は通常月よりも少し多く138,800円が支給されている。最低賃金であると一月フルに働いても生活保護費に満たない。

保護受給者に対するインセンティブが欠けていると生活保護担当者は危機感を深めている。ハローワークへ行っても実務経験がないと面接すら受けられない。

この半年に大阪市の保護受給者で就職した人は1,193人、そのうち保護を脱した人は28人、一方、新たに保護受給者となった人は10,000人を超えている。