高齢期を支える社会福祉システム第12回◇関西福祉科学大学教授・浅野 仁

高齢者福祉のポイントとしては、一つは住み慣れた地域や家で暮らし続ける在宅福祉、もう一つは、健康な高齢者は全体の8割を占めており、こうした健康な高齢者の社会参加促進対策を行っていくということである。

壮年層(50・60歳代)は、介護福祉についてどう考えているか。「家族を中心とし、外部の者も利用したい」次いで「外部の者を中心とし家族介護を受けたい」という意見が全体の70%を占めている。男女での違いとしては、男性は女性よりも家族による介護を望んでいることが分かる。女性の場合は、自分たちが介護をするという役割意識があるため男性よりも低くなると考えられる。

主要な在宅福祉サービスとしては、訪問介護(ホームヘルプ、1,097,769人)、通所介護(デイサービス、1,121,125人)、短期入所生活介護ショートステイ、211,709人)、福祉用具貸与(950,691人)の利用がある。<「ホームヘルプ」等は介護保険上の用語、数値は1995年の実績>

【具体例】兵庫県宝塚市のデイサービス施設「鹿塩(かしお)の家」、市の社会福祉協議会が運営している。民家を利用した高齢者の集まる場である。運営者に地域のボランティアが協力して毎日の昼食を準備している。一人暮らしの人が多く、料理がなかなかできないので昼食を作る。一人ひとりは思い思いに過ごしている。運営委員会を作り月に一度、施設における取り組みについて検討している。施設は地域における支えあいの拠点という意識である。

2006年に制度が創設された地域包括支援センターを見ていこう。

【具体例】神戸市の地域包括支援センター、事務所があり、地域の人が介護保険制度利用の申請などを行っている。職員はケアプランの作成を当事者とともに作成する。保健師(特定高齢者、要支援1もしくは2のケアマネージメント)、社会福祉士(インフォーマルサービスなどあらゆる制度の相談)、主任介護専門員(地域のケアマネージャの調整がうまくいかない場合などの相談窓口)が設置されている。ケアマネージャによる家庭訪問も行っている。介護予防の砦としている。

社会参加、社会活動を通して介護予防も行っていこうとしている。

【具体例】兵庫県いなみ野学園、生涯学習の施設、約40年前に開設された歴史ある施設である。介護保険制度の学習などを行っている。陶芸なども行う。劇団を作ったり、陶芸を子どもなど地域の人に教えたり、地域における活動にも結びつけようとしている。これにより世代間の交流にも役立っている。

2003年における社会参加の状況は、参加団体のある者が64.8%ある。参加団体としては町内会・自治会(34.6%)、老人クラブ(24.8%)、趣味のサークル・団体(19.8%)となっている。

個人的に行っている社会貢献もある。

【具体例】定年の2年前から、これまでとは違う人生を考えるようになり、大学を目指した。3年に編入し、英語を読み取る力、パソコンの利用法について勉強した。福祉の専門職を目指している。シニアボランティアグループにも関係している。家族の了解、経済、健康などをふまえて自分なりにプランを立てた。知力が充実していなければならないと思っている。

社会福祉サービスは、一つは生活施設のサービス、もう一つは在宅のサービスということになる。在宅福祉も、ケアを必要とする人へのサービスと、健康な人へのサービスに分けられる。

今回は触れなかったが、介護保険の給付を見れば分かるように、福祉制度のみならず医療・保健が連携して高齢者福祉を実現することが必要である。