クローズアップ現代「“貧困層ビジネス”グラミン戦略の光と影」

世界の人口の7割は貧困層である。こうした人々を対象としたビジネスが広がっており、途上国はこれが貧困問題解消の突破口になると考えている。

バングラデシュにあるグラミン銀行は、貧困層に対する小額融資を行っており、貧困層ビジネスの先駆けである。社会的課題に取り組む事業に融資している。

先進国では、世界中で40億人に及ぶ貧困層に対するビジネスに着目している。貧困層は一日2ドルで生活している。グラミン銀行とフランスのメーカーは合弁会社を作り、一個8円のヨーグルトを製造している。また、安価な蚊帳などの販売が行われている。合弁会社の利益はグラミン銀行のルールにより国外に持ち出すことができず、このため国内で再投資されることとなる。こうした過程で技術移転も行われる。

10月には、日本の企業「雪国まいたけ」がはじめてグラミン銀行合弁会社を作った。もやしの製造を行っているが、これまで中国から原料である緑豆を仕入れていたが、価格が上昇し、バングラデシュで仕入れることとした。

グラミン銀行のモデルは進出企業との間で摩擦も起こしている。

バングラデシュで求められる技術とは、中小企業の技術であるとグラミン銀行の日本人理事は考えている。中小企業に息づいている昔ながらの技術こそバングラデシュでの実用化の期待がある。

しかし、グラミン銀行合弁会社の利益は国内で再投資されなければならないという原則がある。ユヌス総裁は、利益を求めこれを国外に持ち出すのではなく、バングラデシュの社会問題の解決につながるよう参入企業に対して求めている。

ため池の水を浄水化する技術を日本の企業は持っている。これは、バングラデシュの人々に歓迎され、感染症の抑制にも寄与している。しかし、グラミン銀行では利益を求めることは許されておらず、国外への持ち出しもできない。一方、参入しようとする中小企業はボランティアで事業を行うことはできない。今ではグラミン銀行を介さず、自力での販売を行わざるを得ない状態にある。

北海学園大学大学院教授 菅原秀幸)グラミンのモデルは大企業向けであり、中小企業には向いていない。なかなか参入は難しいといえる。しかし、日本の技術は必要とされており、さまざまな主体との手法を模索しながら浸透させていくことが必要である。