日曜美術館「魂の色彩を~“青騎士”美の革命~」

20世紀のはじめ、ミュンヘンで、自らを「青騎士」と名乗る芸術家たちが色彩革命の運動を起こした。ヴァシーリー・カンディンスキーとフランツ・マルクはその中心的な人物である。

産業が発達し物質万能主義が広がる中で、彼らは人間の内面を見つめ、これをデッサンよりは色彩表現を中心において描き出そうとした。

目に見える風景をそのまま書くのではなく、自らの内面を投影して描き出そうとした。

カンディンスキーミュンヘンで展覧会を開催したが、まったく評価されず、つばを吐きかけられる有様だった。しかし、フランツ・マルクはこれを新しい絵画表現であると共感し、ともに活動を行っていくこととなった。

マルクは動物の絵を描き続けた。19歳のときに馬術訓練で、何にも束縛されない自由な感情、馬との一体感を感じ、これを絵にしたいと考えた。父親は厳しくデッサンを指導したが、マルクは動物とともにいることによる安らぎを感じ、次々と動物をモチーフにした絵を描いた。

カンディンスキーはその絵画の抽象性から、芸術家仲間から排斥され、これに反発したマルクたちも脱退し、「青騎士」と名乗って独自の取り組みを始めた。

カンディンスキーは、いっそう色の研究を深めていく。さまざまな色彩のリングを描き、どのような感じられるかを確認している。例えば太陽を赤ではなく緑で描くと太陽の意味も違ってくる。常識に囚われず、色彩の生む心理的効果を意識しながら描くということである。こうして、カンディンスキーやマルクは物事の本質や精神性を描くことに傾倒していった。

マルクは馬の絵をよく描いた。マルクは馬に生命のエネルギーを感じていた。

20世紀の芸術家たちは、この青騎士の活動に見られるように、「分かりやすいもの」ではなく「見る者の心を騒がせるような作品」を生もうとした。