特報首都圏「縮む日本・何を残し何をあきらめるか」

今、日本が縮み始めている。人口が減ることを踏まえ、公共施設をどうするか自治体は検討している。取り組みの方向性として「公共施設の統廃合」や「公有地の売却」などを行っている。また、これまで営造されたインフラも傷みが目立っているが、なかなか補修できないという現状がある。

2046年には日本の人口は1億人を割り込むと見られている。そのころには60歳以上の者が4割以上となる。

千葉県習志野市は、東京のベッドタウンであるが、これからは人口も予算も減っていくことが予想されている。習志野市役所では、『公共施設マネジメント白書』を発行し、その中で「すべての公共施設を残すことはできない、今後20年で維持費が800億円もかかる」ということなどを調査結果として掲載している。

同市の市民会館は築44年であり、壁にもひび割れがある。本格的な補修には2億円かかる。また、このほかにも公共施設の6割が築30年以上であり、補修するのかそれとも廃止するのかを決めなければならない。公共施設を今後どうしていくかという考え方について市民とタウンミーティングを行っているが、市民は「施設はあって当たり前」という考え方で存続を要求される。

施設の維持管理等の財源として市有地の売却も進めているが、景気が回復していないため歳入はそれほど期待できない。

コンサルティング会社(ファインコラボレート研究所)では、習志野市をはじめ30を超える自治体からの公共施設のあり方について相談を受けている。

神奈川県秦野市では、深刻な財政難を受けて今後公共施設を一切建設しないという方針を打ち出した。プロジェクトリーダーはアイデアしだいで公共施設は作らなくてよいと考えている。コンビニで図書の返却や住民票の交付を行ったりしている。

箱物を作らなくてよいとする考え方の基礎に施設の統廃合がある。複数の施設をまとめて維持管理費用を圧縮するとともに廃止する施設は売却する。

野村総合研究所上級コンサルタント 宇都正哲)市民は当惑していると思う。これまでは新しく作ってきたのに対し、統廃合・廃止が行われようとしている。自治体では、一つひとつの施設についてどれだけ維持管理に費用を要しており、どれだけの利用なのかということを明らかにすることで市民の理解を得るしかないだろう。

現在でもインフラ投資に積極的である自治体が22%を占めている。これは、従来型の施設を作っているのではなく、高齢者用の介護施設や企業誘致の施設などを作ったりしている。

長野県では県道の橋が陥没してしまった。それだけ老朽化が進んでおり、一歩間違えば大惨事になるところであった。

飯能市では、道路の補修などの苦情が年間700件寄せられている。橋がなければ孤立してしまう小さな集落がいくつもある。ある橋は築88年になっていて大変老朽化し、傷んでいるが、橋の架け替えには2億円がかかり、この費用は飯能市の橋の架け替えにかけられる1年分の予算に相当する。

(宇都)地方だけでなく首都圏でもこうした問題が起きている。早めに小さな傷でも補修して永く使えるようにして、インフラ投資を抑えるようにしなければならない。

(宇都)インフラの考え方三か条

1.あって当たり前という考え方を捨てる

2.自治体の使える金は減る

3.縮む社会を受け入れる