クローズアップ現代「“再虐待”子どもたちを守れるか」

児童虐待が増加しているとともに、児童相談所などの指導を受けていったんやめた虐待を再発させる「再虐待」が年間8,000件も起きている。

家庭に帰った子どもたちが再虐待を受けていることについてはこれまであまり明らかになっていなかったが、児童相談所へのアンケートにより2割の子どもが再虐待されていることが分かった。

虐待を受けた子どもは児童相談所による保護を受けて、その後9割は家庭へ戻ることになる。しかし、引き取った家庭では、子どもに愛情がもてない、親がうつ病になった、両親が離婚した、などという要因で再虐待が行われていることが分かった。

あるケースでは、妻が夫から離婚を切り出され、孤立を深め、お茶をこぼした子どもを殴りつけた。

児童相談所へのアンケートでは、再虐待を防ぐのは難しいとしている。

再虐待は、親の側に大きな要因があるが、児童相談所では親の状況を継続的につかむのは難しい。留守番電話を入れても返答がない。面接を要望しても断られてしまう。訪問しても会ってもらえない。

いま、児童養護施設には、虐待を受けた子どもたちが保護されている。そのうち半数は再虐待である。

山梨県立大学教授 西澤哲)再虐待が子どもに与える影響は深刻である。怒りを始終何かにぶつけたり自傷行為を行ったりしている。虐待は意志に基づいているものではなく、約束をしても気がつかないうちに虐待をしてしまっている。児童相談所は努力している。しかし人手が足りない。48時間ルールという、通報があったときにこれへの対応が児童相談所に義務付けられており、これだけでも手一杯である。

神奈川県中央児童相談所では、親とのコミュニケーションを円滑にするために特別なチームを作っている。このチームでは、指導を行う担当職員と親との対立をふまえて支援計画を作る。

三鷹市子ども家庭支援センターでは、児童相談所、学校、保育所や病院など親子にかかわるすべての機関がセンターを中心としたネットワークを組む。

(西澤)神奈川県の支援はソーシャルネットワークの基礎をきちんと行っている事例である。三鷹市は生活に寄り添って丁寧に支援している。児童相談所は、社会福祉の専門家が集まっており、多忙であることは事実だが、こうした事例を参考にしてほしい。アメリカでは親が養育できないとなると、必ず別の親を探す。親権の喪失をして養子縁組や里親を探すことを行っている。もし親元に帰すのであれば、それ相応の支援を行うべきだろう。われわれも、虐待について、行政や施設に任せるばかりでなく、市民として親に対してどんな支援を行うことができるか考えるべきだろう。