クローズアップ現代「ある少女の選択~“延命”生と死のはざまで~」

9月半ばに18歳の女性、田島華子さんが延命治療を拒否して亡くなった。

延命治療は、人工呼吸器・人工透析・経管栄養などを利用して行われている。とりわけ患者が子どもの場合には命を救うことを最大の目的として医療が行われる。

華子さんの両親は、当初延命をしたくないという本人の気持ちを尊重したいとしていた。

華子さんは生まれつき心臓に重い病気をかかえており、8歳でドイツで心臓移植を受けた。そして10歳で人工呼吸器を装着することになり、声を出すこともできなくなった。

しかし、訪問診療を活用することにより自宅での生活ができるようになった。華子さんは家族といられる時間を何より大切に考えていた。また、「人の命は長さではなく、どう生きたかだと思います。」と考え、それを家族にも伝えていた。

今年に入って、腎不全を発症し、人工透析が必要な身体になった。自宅で透析を行うことは難しく、病院に行かざるを得ない状況になった。

しかし、「病院にいたらつらい、普通に家族三人で暮らす決意をしました。」と華子さんは言う。家庭での生活を続け、6月には医師の指導のもと家族での旅行をした。

身体も大きくむくんでしまう。最初は延命拒否を認めていた両親も主治医も華子さんに生きてほしいという気持ちが強くなっていった。しかしそれを本人に押し付けることはできない。本人にも改めて延命治療を受けてほしいと懇願したが、華子さんの強い意志は変わらなかった。

8月になると華子さんは肺炎を起こし、呼吸さえままならないようになっていった。そして、9月14日に両親に見守られながら眠るように亡くなった。

華子さんは、お世話になった人々へ、旅行に行けて嬉しかったことを伝える感謝の手紙を残していた。

聖路加国際病院副院長 細谷亮太)先端医療が進むにつれてやれることはたくさん出てくる。これを使うかどうか家族と一緒に決めていく時代が訪れようとしている。本人の心と身体を支える、という視点で先端医療を含めた選択肢を考えることではないか。