サイエンスZERO「バイオイメージングが医療を変える」

細胞を光らせる「バイオイメージング」ががん治療を変えようとしている。

ノーベル化学賞を2年前に受賞した下村脩さんがオワンクラゲを研究し、この技術を生み出した。

進行した胃がんは転移しやすいため、腹膜などへの転移状況を確認する必要がある。通常は組織を凍らせ薄く切る。このなかにがん細胞があるかどうか顕微鏡で調べるがこれに15~20分かかり、手術が中断してしまう。手術を中断しないためにがん細胞を光らせる方法を用いている。われわれの細胞の中にあるPP9という青く光る物質を利用して調べる試みがなされている。がん細胞に転移があるときはそこが赤く光る。瞬時に判断ができて見落としも少なく患者の負担も小さい。

京都府立医科大学教授 高松哲郎)がん細胞は2mmまでは1~4年で成長するが、その後14~21年もかかって1~2cmとなる。ここからは急速に成長が始まり転移も始まる。転移のないときにがんをみつければ完全に取り除くことができ患者は助かる。

(高松)小さい段階でのがんの発見が必要である。小さながんにも血管が集まりNADHという分子が多く存在し、蛍光を発するはずである。現在ラットで実験しているが、胃や腸に光を当てて調べる。臨床実験の後実用化されることとなる。

メタボリックシンドローム、このメカニズムも東京大学医学部におけるバイオイメージングを利用した研究で明らかになろうとしている。正常なマウスの脂肪細胞とメタボリックシンドロームの脂肪細胞は大きさが違う。また、新たな発見事実として、脂肪細胞が増加し、白血球が攻撃して慢性炎症を起こし悪玉物質が全身に広がり血管の動脈硬化などを引き起こしていることが分かった。従来の「脂肪が血管に貼り付いて動脈硬化が起きる」ということとは別の要素が分かってきた。

心筋梗塞の患者は不整脈がおきやすいが、バイオイメージングで心筋におけるカルシウム濃度が正常な動きをせず、このため不整脈が起きていることが分かってきた。また、カルシウムイオンは全身にあり、心臓だけではなくさまざまな身体の動きに影響を与えていることがバイオイメージングで分かってきている。

神経細胞の中のカルシウムイオンを調べる動きも理化学研究所で出てきている。運動失調を起こしているマウスにはIP3受容体というものが欠けている。これはカルシウムイオンを調節する仕組みを果たしている。受容体を持たないマウスはカルシウムイオンを調節できず、運動失調につながってしまう。この研究はALSやハンチントン舞踏病などの特定疾患の治療に役立つことが期待されている。

(高松)バイオイメージングは直接的に目の前に病変等が現れてくる。治療にあたり非常に効果的である。