自治体と政策( 09)第9回「自治体とコミュニティ」◇放送大学教授・天川 晃

自治体と政策 (放送大学大学院教材)

自治体と政策 (放送大学大学院教材)

自治体と町内会の関係について考える。

札幌市では、地域まちづくりセンターが各地区に設置されており、戸籍等の簡単な行政事務や情報提供、地域の活動の手伝いをしている。また、地域の連合会があってさまざまな機能がここに統合され、暴力団排除などの取り組みも行っている。

岸和田市は20万人の特例市である。町会が156あり、またそれが23校区の市民協議会で統合され、また一方で連合町会がある。だんじり祭りはこうした組織が協力して行っている。

いずれの都市も自治体との結びつきは、連合会や校区単位の組織であり、この組織がさらに社会福祉協議会などとも結びついている。

山間地域、島根県の邑南町(13,000人・高齢化率39.5%)ではどうだろうか。住民生活の基本単位である集落が崩壊の危機にある。高齢化率50%以上の限界集落が多く存在している。農地・林地などの存続が難しくなっている。草が生え放題となり土地が荒れ、サルによる作物被害も生じている。NPO法人が牛を放牧して草を食べさせる、またサルの被害を防ぐため防護柵を設置するなどしている。

集落だけでがんばるのではなく校区単位の組織を活用したいとしている。ただし、そのつなぎ役が難しい。NPOやマネージャを配置してこれを行おうとしている。

NPO代表)市町村合併で役場が遠くなった。これをフォローするために集落同士を結びつけた組織として自治会を作るということがあるが、軒並み70歳以上のメンバーであり難しい。地域の集落支援センターを作って支援していくという方法が有効ではないかと考える。

明治大学教授 中山)中山間地域について三つの空洞化(人、土地、ムラ)が進んでいる。これについて一つひとつ丁寧に対応していくことが必要。この空洞化の背景に誇りの空洞化=地域に誇りがもてない、子どもも移住を勧めるということがある。手作り自治区、いくつかの集落をまとめた地域組織を進めていくことが必要。自分たちで商店やガソリンスタンドを設置したり、宿泊施設を運営するなどのことがある。また、新しい意思決定の仕組みとして、夫婦単位で参加したり若者も参加するなどの特色がある。また、従来の組織の代替ではなく補完組織であるということも特徴である。自分たちの課題、宝の共通認識をふまえ、地域再生のフロンティアとなることを期待している。

コミュニティがしっかりしていないと自治体もしっかりできない。