クローズアップ現代「緊迫の朝鮮半島~北朝鮮砲撃の波紋~」

黄海で行われている米韓軍事演習には、米軍の原子力空母ジョージ・ワシントンも参加し、北朝鮮に対して強い力でけん制を行った。一方、北朝鮮もさきのヨンピョン島への砲撃に加え、さらなる軍事的行動に出る可能性がある。

今回、北朝鮮は、漁業中心の島であり1700人の住民がいるヨンピョン島に400発の砲弾を撃ち込んだ。

これまでヨンピョン島の住民は北朝鮮に対して警戒感は持っていなかった。しかし、先週の砲撃で島民の多くは島の外での避難生活を余儀なくされている。避難所での生活に耐えられないため島に残った人々もいる。

(島民)同じ民族を砲撃するとは理解できない、韓国は北朝鮮に対して援助も行ってきた。

国民の怒りと不安は現在、韓国政府にも向けられるようになってきている。大統領は、今後強い態度で北朝鮮に臨むと態度表明した。

韓国では2年間の兵役を終えると予備役となり、有事の際には兵士として戦線に参加することとなる。

兵役を迎える大学生の会話は今回の砲撃の件一色である。

立教大学教授 李鐘元)北朝鮮は以前から脅威ではあったが、これまでは軍同士の衝突であり民間人が巻き込まれることはなかった。また、経済力で40~50倍の格差があり、攻撃してくることはないだろうと考えていたが、今回の攻撃が行われた。

(李)イミョンバク政権は、今回の砲撃を防ぐこともできず、応戦もできなかった。国民は不安と不満を持っている。しかし、戦争の選択は経済力へのダメージとなることから政権にとってはありえないと考えられる。

先月初めて公に姿を現したキムジョンウン氏、専門家はこの後継問題が砲撃の背景にあると考えている。今回の砲撃は、軍を掌握し、後継者としてのカリスマ性を高めることにもつながる。北朝鮮の軍人たちは口ではジョンウン氏を支持するといっているが、キムジョンイルが死去した場合、軍人たちがどう動くか分からない。体制を磐石にするためにも今回の攻撃により結束を高めることが必要であった。北朝鮮の民衆も支配層ばかりが豊かになっていく現実に不満を持っている。

さらに、今回の砲撃にはアメリカを交渉のテーブルに引き出すことが狙いとしてあると考えられる。直前にアメリカの研究者を呼び、ウラン濃縮施設を見せている。何百もの遠心分離機を見て研究者は驚いている。そして今回の砲撃、アメリカに対する挑発のレベルを上げてきている。

(李)今回の攻撃には長期の視野がある。中国の軍事力も関係している。

北朝鮮に対しては、哨戒艦沈没事件以来すでに制裁のカードをほぼ使ってしまっており、韓国も対応が難しい状況にある。

(畠山)北朝鮮の矛先が日本に向かうことはないか。

(李)臨検等を拡大すればそうしたことがないとも言えないが、今のところ北朝鮮はそこまで考えていないだろう。