特別講義「情報セキュリティ-デジタル社会を守る技術と制度-」山口 英

情報システム、ネットワークの利用は一般的なものであり、個人レベルでは購入、予約など、企業では販売・在庫管理、決算などさまざまな部分に適用されている。

ブロードバンド利用者は非常に増加しており3,000万人が利用している。DSLや光ファイバー、そしてCATVを利用している。

情報セキュリティは、技術のみならず法制度を含んでいる。

情報セキュリティに関する主たる事件としては、システムのトラブル、情報漏えいなどさまざまでその原因も多様である。

マルウェアの蔓延、深刻な情報漏えい被害、システムの停止、無線ネットワークの脆弱性、USBメモリ、サイバー犯罪などが原因となっている。

マルウェアは情報を外部に漏洩したり、システムを破綻させたり、他のPCに感染したりする。マルウェアは多種多様であり、ウイルス対策ソフトでも対応が難しい。またマルウェアは実害を与える。利用者が気がついていないうちに複数のマルウェアが取り込まれていることもある。コンピュータを外部から操作できるBOTというものもある。

情報漏えいについては、とくに個人情報漏えいが多い。これによる想定損害賠償額は2007年には2兆5,000億円に達している。不正アクセス、情報の持ち出し、ウィルスによる持ち出しなどが原因としてある。

システムの停止、最近では2008年12月に新幹線運行システムのトラブルがあった。3時間の間JR東日本の管区内ですべての新幹線が運行できなくなった。小売、流通、銀行などでも発生している。こうした重要なサービスのトラブルは世界中で起きている。

無線セキュリティの脆弱性がある。無線は大変便利である。しかし、初期に導入されたイーサネットは暗号化が弱く、傍受して解読されてしまう。

また、USBメモリ経由でのウィルス感染は急激に世界中で広がっている。USBメモリをさされるとそのプログラムを起動し、感染してしまう。感染したコンピュータはマルウェアをダウンロードするなどしてしまう。USBメモリ経由のウィルス感染は2008年の後半には1ヶ月で10万件の届出があった。

サイバー犯罪としてフィッシングなどがある。

情報セキュリティのリスクに対する対応として、技術と制度で対応している。制度としては組織管理、ルールがある。通常のビジネスの中にセキュリティを取り込んでいくことが必要である。

情報システムの脆弱性、これが情報セキュリティ対策の多くを占める。設計段階から脆弱性を生まないようにすることが必要である。

以前は大規模なネットワークへの攻撃が主だったが、最近は小さいネットワークへの攻撃、気がつかない場合も多い。きちんとした対策をしてもすべてを防ぐことは困難である。何か起きたときに気がつくということが大切である。

マイクロソフト、ウィンドウズXPと比較してウィンドウズ7ではセキュリティが高まった。しかし脆弱性をゼロにすることは困難である。

BOT(ウィルスの一種)については、国内で30万台が感染している。高機能で攻撃も多彩である。自分のアカウントやパスワードが盗まれてしまう。気がつかないうちにこっそり盗まれてしまう。個人情報を抜かれてしまう。以前は愉快犯だったため感染するとすぐに分かったが、現在はBOTに感染したPCは分かりにくい。

情報セキュリティについては時々刻々内容が変わっていく。最新の状況を学び続け、自身のセキュリティに生かしていくことが重要である。