視点・論点「21年度会計検査・埋蔵金と予算統制違反」日本大学教授 有川博

会計検査院は平成21年度の会計報告をまとめたが、不正な支出は1兆9700億円が指摘され、これはきわめて多額であると言うことができる。

この報告で浮き上がってきたのは、特別会計等における埋蔵金の存在と予算の執行における予算統制と内部統制の欠如である。

まず埋蔵金についてであるが、特別会計独立行政法人国立大学法人公益法人などでその存在が指摘された。

特別会計で年度内に不用額が生じることが分かっているにもかかわらず一般会計からの繰り入れが行われていたのが1620億円であった。また鉄道関係など独立行政法人の1兆2400億円等が不適正な支出であると指摘された。

国立大学法人についても埋蔵金の存在が指摘された。過去5年間に目的積立金が2280億円となり、これを国庫に返納される直前に日常的な費用にあてていた。目的積立金は本来経営努力を促すための仕組みだったはずだが、そうしたモラルハザードを生んでいるのだ。

政府における予算統制と内部統制の欠如であるが、まず地方自治体では47都道府県18政令指定都市53市すべてで不適正経理が発覚した。これまでにも都道府県において不適正経理が発覚しているにもかかわらず、それを他山の石としていないということがいえる。内部統制の欠如がこうした状況を生んでいる。

国でも内部統制の欠如、予算統制の欠如(財政法・会計法・特会法・補助金適正化法違反)が見出された。行政の中身さえよければという考え方であり、財政民主主義の規律が失われている。