ハーバード白熱教室@東京大学「イチローの年俸は高すぎる?」

・正義とは、最大多数の最大幸福(ベンサム)と、人間の尊厳と自律(カント)、目的から類推し美徳と共通善を求める(アリストテレス)に分けられる。

・海で遭難し、身体の衰弱した給仕の少年を、他の乗組員が殺して食べてしまうという事件がイギリスであった、この行為は道徳上許されるのか。

・(男子学生1)衰弱していて助かる見込みがないのなら仕方ない。

・(女子学生1)人間の命に軽い重いはない。

・(女子学生2)少年の同意があれば許されるのでは。

・(サンデル)本人の同意があっても殺すことは許されないということか。自律権は命にまでは及ばないという考え方か。(不可譲の権利)

・給料の格差は許されるのか。ある人は市場で決まることは公正であるとする。一方、それに反対する人もいる。イチローは1800万ドルで、一般的な教師は4万5千ドル、この格差は許されるのか。オバマ大統領は40万ドルで、教師より高いものの、イチローよりはるかに低い。

・(女子学生3)イチローは単なるチームの一員だが、オバマはアメリカ国民全員に対して責任を負っている。核の行使さえ決定できる立場にある。

・(女子学生4)イチローは生きる楽しみを与えてくれている。受ける報酬に値しないとは思わない。

・(サンデル)その報酬の一定割合が税として徴収されることについてはどうか。

・(男子学生2)国家が富の再分配を行うのはおかしい。犯罪を抑えるなどに利用するのはよいが、国家が不平等を是正するのはおかしい。

・(男子学生3)国家は最低限の生活を保障する役割があるだろう。

・(サンデル)功利主義者は富の再分配を肯定するはずだが。

・(男子学生1)そのとおり。豊かな人々に課税して、これを貧しい人に移転すれば、その富はより大きな効果を挙げるだろう。(会場拍手)

(サンデル)さきほどの遭難の例では、功利主義は冷酷なものだったが、今回の富の再分配では、功利主義は大きな拍手を持って受け入れられた。

・(女子学生5)自分たちの住む社会で富がないことで犠牲者を出すべきではないのでは。

・(サンデル)ここまでの議論の中で、功利主義と、人間の尊厳と自律と選択の尊重を論じる考え方をみてきた。後者はリバタリアンでもある。また、自律主義でも、生命と財産を同列に論じるべきではないという考え方もある。善良な人々について、人間の美徳に関連して論じた学生もいた。

・(サンデル)高等教育を受ける権利はどうだろう。テストの結果だけでなく、お金を出すことで入学を認めてもよいだろうか。

・(男子学生1)それを認めると不正になる。いくらお金を積んでも認めるべきではない。

・(女子学生6)水準の高い学生ならよいのではないか。

・(男子学生4)入学するのにあたり努力しているはずなので、これなしに入学を認めることはおかしい。

・(男子学生5)大学は、研究と教育を受けるところである。一定の水準があればよいのではないか。

・(男子学生6)もともと東京大学の学生は裕福な家庭出身者が多い。だから、学力以外の能力をもって貢献する人があってもいいのでは。