クローズアップ現代「“尖閣映像”流出の波紋」

尖閣諸島の衝突事件映像、これを流出させた海上保安官は、公開した理由について「国民に広く知ってほしかった」としている。

海上保安庁では、北朝鮮の不審船など、こうした映像は原則公開していたにもかかわらず、今回の事件では公開されなかった。外交問題にかかわる機密情報をどう取り扱うのかという問題を提起することになった。

・現在、情報を流出させた海上保安官は、国家公務員の守秘義務違反の嫌疑がかかっているが、逮捕はされず任意での事情聴取が行われている。

・今回の情報流出を受けて、こうした事案が発生したときに公開/非公開の基準はどうあるべきか、今後こうした事件が起きたときにどうするか、国民の知る権利はどうあるべきかという問題が提起されることとなった。

海上保安官は、この映像がこれまでと同様に今回も当然公開されるものと考えていた。しかし、政府により公開は見送られた。

・政府の態度には一貫性がなかった。中国人船長を最初は法の手続きにしたがって対応するとしていたが、日本人の拘束が行われた日に態度は変わり、中国人船長を嫌疑不十分のまま釈放することとなった。また、衝突事件の映像は、国際政治情勢という観点から公開しないままとなった。

・(田中均海上保安官がこうした行動をとるのはあってはならない。しかし、そもそも非公開にすべきであったかということは別の問題としてある。政府は、映像を非公開にする理由をきちんと示したり、一貫性のある対応をすることが必要だった。

・(田中均)外交で秘密にするかしないか、国益を担保するということが視点となるはずだが、情報公開法もあるため秘すべき情報は限られていると見るべきだろう。

アイスランドでは金融危機で破たん寸前までいった。そうした中アイスランドは、金融機関への巨額支援を行ったが、その金融機関で行われていたずさんな融資の実態についてはテレビの放送を裁判所の令状を利用して公開を抑えるなどしていた。しかし、これをWikiLeaksが公開して国民が知るところとなり政府への批判が高まった。これを受けて、アイスランドでは公共の利益がある場合には、情報公開を基本にするよう制度化しようとしている。

・(立花隆)インターネットにより個人が情報を伝える手段を持った。あの保安官が行ったことはたんに映像をアップしただけに過ぎない。ところが、その情報は奔流し、閲覧されるとともに子や孫がどんどんできた。あの流出には事実上たくさんの人がかかわっている。また、あの画像をネットで見るという驚くべき体験を多くの国民が持つこととなった。

・(田中)情報は何でも公開すればよいというものではない。やはり最終的には国民から選ばれた政治家がこうした案件について国益を考え、公開/非公開について判断しすべき。また一貫性のある対応も非常に重要。