現代環境法の諸相( 09)第7回「法は環境を守れるか~市民の役割(2)」

現代環境法の諸相 (放送大学教材)

現代環境法の諸相 (放送大学教材)

環境管理において、裁判は大きな役割を持っている。

今日は、共同不法行為論や被害者救済を超えた裁判の役割など、また後半は行政訴訟を見て行きたい。

水俣病チッソの単独行為であったが、四日市ぜんそくでは複数の工場から排出されるばい煙が原因となっている。これに対して個別の相関を求めることは難しく、こうした場合には民法第719条第1項では共同不法行為を定め、連帯して責任を負う形式としている。これは民法第709条で定める1対1の責任と対比して考えられる。

共同して汚染しているという関連共同性が強い場合に限り、共同不法行為が成立する。関連共同性が弱い場合には因果関係を推定することになる。

続いて差止め訴訟を考える。被害が発生する前に加害行為を防止するものである。違法性の判断基準として被害の性質と内容、加害行為の内容と程度、など5つの基準である。差止めは将来の話である。差し止め訴訟が提起されても事業そのものが停止されるわけではない。そのまま着々と進むこととなる。このため「仮処分」により停止することが必要となる。仮処分、差止め処分と異なり「一応確からしい(疎明)」ことで可能となる。

たとえば産廃処分場の建設に当たっては、行政が許可を下した場合であっても、地域住民への影響をふまえ、仮処分が行われてきた。

抗告訴訟は、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である。取消訴訟・義務付け訴訟・差止め訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟がそれである。

抗告訴訟をめぐる法律関係であるが、事業者は法律に基づいて申請をし、行政も法律に基づいて許可を行う。これに対して、住民が訴訟を起こすのは、第三者訴訟といわれる。取消訴訟を第三者として提起するには原告適格が問われる。法律上の利益を有するものだけが提起可能なのである。(行政事件訴訟法第9条第1項)

2004年に行政事件訴訟法が改正され、原告適格の拡大が行われた。処分根拠法規の趣旨及び目的にそっているかどうかが判断基準に入れられた。

行政事件訴訟法第30条では、行政庁の裁量処分の、裁量権のゆ越、誤りについて行政訴訟を提起できるようになっている。日光太郎杉事件はこのことに関連した判例である。

空き地に産業廃棄物が投棄された場合、不法投棄した者に対して行政庁は原状回復を命じることができるが、それをしない場合、義務付け訴訟を提起できる。

国家賠償訴訟でも環境問題に関連する訴訟を扱うことができる。国家賠償法第1条第1項による公務員の故意または過失に伴う損害に関して国または地方公共団体は賠償の責めを負う。また第2条第1項に関する道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があった場合に賠償しなければならないことを定めている。(大阪国際空港事件)

住民訴訟地方自治法第242条の2に定義されている。たとえば公共事業の環境への影響に関連して住民訴訟が提起されたこともあったがあまり成功していない。アメリカでは多くの環境法に市民訴訟が定義されている。