自治体と政策( 09)第6回「人事行政」◇早稲田大学大学院教授・稲継 裕昭

自治体と政策 (放送大学大学院教材)

自治体と政策 (放送大学大学院教材)

地方公務員数は1978年に320万人に達し、最近は減少しつつある。退職者の補充が中心であり組織の膨張はストップしている。このため2007年には平均年齢が43歳と高齢化している。こうした高齢化は給与水準の上昇や処遇するためのポストにも影響を与えている。

人事課は異動権限を持っており、内部では疎んじられている。人事委員会が採用を実施しているが、市町村では人事課が実施している。人事課の業務の多くは人事異動にかけられる。11月から12月にかけて所属ヒアリング、本人の異動希望をふまえて1月以降は人事異動案の作成が行われる。

岸和田市人事課担当者)人事異動は組織の力を強めたり弱めたりする。個人の能力の把握が難しいところである。研修により段階的に能力を高めていくことも重要である。平成20年度から団塊世代の退職が始まり、これからは少数精鋭でやっていくことが必要。

(片山元鳥取県知事)人事は非常に重要である。首長の意向が反映することが必要。通常は、下から上がってきた異動原案について意見をいうという形だと思うが、自分の場合は、自ら幹部職員の異動原案を作った。

国家公務員は採用時点でキャリアとノンキャリアに分けて昇任を行っている。一定年齢以降昇任に差が現われる。キャリアについては、40歳以上について、「アップオアアウト」という昇任できなければ外に出るというやり方を行ってきた。

一方地方公務員については、こうした選別は行わず、基本的に年功序列である。しかし、第二臨調期以降は、地方公務員数は横ばい、下降し、昇任の年限を後ろにずらしたり、昇任試験を行うこととしたり、代理、補佐、主幹などのポスト増設で対応したりしている。ポスト増設で対応しているケースがもっとも多いが、組織における意思決定に遅れが出ており、これを解決するためグループ制などをとったりしている。

(片山)中央官庁には優秀な官僚が多い。自治体に来てもらって仕事をしてもらうことは有効である。また、官僚も現場を学ぶこととなり、これは官庁の改革につながる。ただし、自治体は仕事上の「つなぎ」を期待している面が大きかった。官庁の側も、官僚に勉強してほしいということがあるが、何らかのリモートコントロールを意識していることも事実である。道路特定財源一般財源化、逆に特定財源の堅持、こうしたことが総務省から出向した総務部長や国土交通省から出向した土木部長が知事に説明する。つまり知事の意向は、実は中央官庁の意向であるということになる。

職員は欧米と異なり、大部屋主義で個人個人の仕事の領域は必ずしも明確でない。協力し合って仕事を進めていくということになる。

職員構成の変容により実績・能力主義が求められている。また地方分権の進展により自治体で解決すべき問題は多くなっている。NPMの進展により民間企業の経営管理の手法を導入しようとしている。

昇任試験や人事評価を導入する自治体が多くなってきている。岸和田市では、能力評価を簡易コンピテンシーにより、また実績評価を目標管理により行っている。能力開発期、拡充期、発揮期に分け、下位の職位は能力中心に、上位の職位は実績中心の考課を行っている。

岸和田市主査)この制度は、最初負担に感じたが、今では自分を見直すよい機会になっている。今年の目標が上司によって明確に提示され、また上司は能力開発の相談に乗ってくれる。コミュニケーションが図られるようになっている。

岸和田市理事)この制度を実施する以前から人材育成について取り組んできた。これまで目標管理や能力評価を行う自治体はあったが、それは処遇のためのツールであった。そうではなく、いかに人材を育てるか、というところに着眼して平成15年度から試行、その後本格実施している。